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 楽しい、と思ったことはほとんどない。強いていえば、家族に何かいいことがあったときくらいだろうか。それ以外は、特にない。  自分の残りの寿命を数える日々だった。気の遠くなるような時を生きる天使は、死ぬとしたら病気になるか、けがをするかだ。寿命で死ぬ者などほとんどいない。自殺をしたいと思うほど自殺願望があるわけでもないが生きるのには疲れたと、そんなことを考えていたハルは、何をするわけでもなくぼんやりと生きていた。喜びでも悲しみでも、感情の起伏が一切ない人生を生きるのは、苦痛だった。  そんな風に生きていてどのくらい経ったのか。初めて、心が動かされる出来事があった。  ――ラズワードとの出会いだ。  奴隷市場の中で、隔離された場所にいたラズワード。簡素なベッドの上で寝転んでいる状態でいる彼が初めて見た彼の姿だったが――始めてみた瞬間に、たぶん、恋に堕ちていた。

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