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第5話

体育が終わってすぐ泰士に腕を引っ張られた。 「お前大丈夫?」 「何が?」 「いつもより顔赤いような気がするんだけど……ていうか、ちょっと来い」 「えっ、なんだよ」 言われてみれば頬が少し熱いような気もするけれど、それより泰士の顔が少し怖い。 纏っている雰囲気がピリピリとしているようだった。 泰士は近くにいたクラスメイトに次の時間サボるから保健室だと言っておいてと一言告げて、俺の手首を掴んで大股で歩き出した。 急いでいるのか、何かに焦っているのか。 見たことのない泰士の様子が怖かった。 「秀哉、お前βだよな」 突然投げつけられた質問に表情が固まった。 それを泰士が目を細めて切なげな表情で見ている。 これではβじゃないと言っているようなものだ。けれどそこまで考える余裕はなかった。 ただそれを肯定する。 「そ、そうだけど。何?」 廊下を歩いていた泰士がぴたりと止まる。泰士が急に止まるから俺は泰士の腕に体をぶつけるようにして足を止めた。 泰士は矢庭に廊下に面した空き教室の引き戸を開け俺を引っ張り中へ入った。 一緒に入り戸を閉めるとすぐに内鍵をかける。 「何で鍵閉めたんだよ」 「秀哉の体が見たいから。胸見せてって約束しただろ。見てもいいって言ったじゃねぇか秀哉」 「そうだけど、今?」 「そう今。体育の間中ずっと、気になって気になってバスケに集中できなかったんだよな」 「ぶっ……、ださ」 イケメン泰士が俺の胸が気になって仕方なかっただなんて、なんだか滑稽で笑える。 それとも本当に心配してくれてのことなのか、泰士の真意は不明だ。 俺も改めてじっくり見てみようと思っていたので、これはこれでいい機会だと思う。 「秀哉、はい、ばんざーい」 「なにそれ、ふふっ……」 笑う俺を見ながら泰士がいつもの調子で言う。俺が両手を上げると泰士が体操着を上に引っ張り上げる。腹、胸が晒されて、首、頭と腕からすぽっと体操着が抜けていく。 外気が肌に触れた途端、余計に乳首がきゅうっと絞られるように感じた。 「ん……」

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