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第7話
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「発情期がごく近い兆候ですね。予防として抑制剤を服用するのはかまいませんが、あまり多用すると副作用、例えば吐き気、眩暈などが起こる可能性があります。それから抑えていたΩフェロモンが多量に放出される事例も少ないですが報告されているので、これから先まだまだ長いですから、できれば時々は弱い薬でやり過ごしたりすることをお勧めします」
「はい……」
今まで他人事のように感じていた俺の中のΩ。
泰士との接触で、他人事ではないとまざまざと見せつけられる羽目になった。
どきどきして、赤くなった乳首がピンと張り詰め、触ってもいない性器までもが頭を擡げた。
泰士はそれに気づいたのか、「大丈夫大丈夫」とずっと俺を抱きしめ背中をさすり続けた。
すごく、息苦しかった。
その場で身体を弄ってしまいたいくらいもどかしくて、厭らしいことで頭の中がはちきれそうだった。
この体調の変化を恥ずかしくて相談するのもいやだったけれど、頼れる身近なΩは母さんしかおらず、俺は泣く泣く相談することにした。
そして今日、学校を早退して、近所の総合病院へ診察を受けにきている。
俺は医者に手持ちの薬を見せて、手持ちのものよりも特効成分の少ない比較的弱い薬と避妊薬を処方してもらった。
どうやら俺が持っていた薬は頓服薬だったらしい。発作的に起きた発情を抑えるものだった。
「それではお大事に」という声を背中に受けながら診察室を出ると、母さんが「ごめんね」と言った。
「何が?」
「Ωって不便でしょ。できればαかβに産んであげたかったんだけど……。でもちゃんと薬をうまく使って過ごせば今までと変わりないから。発情期の間は無理して学校行かなくてもいいし、あまり気負わず気楽に考えて、ね」
「……うん」
もうすでに俺をΩと見抜いたαがごく身近にいるということは、俺の口からは言えなかった。
小柄な母さんに「うまくやるから心配しなくていいよ」と微笑むことしかできなかった。
クラスメイトにαがいて俺がΩだってばれちゃったんだ……って、そんなこと言えない。
多分泰士は大丈夫。
俺はどういう訳か、泰士は俺に乱暴なことは絶対しないだろうと確信めいたものを感じていたのだ。
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