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第8話

俺は翌日から医者に処方された薬を飲んでから学校に登校した。 初めての発情が近いうちに訪れると診断されたからだ。 それに校内で突然発情してしまったらどんな目に合うかわからない。 そして今までは大して気にならずにいたことが気になり始めた。 自分だけがΩのような気がしていたけれど、俺の他にもΩはいるのだろうか。 泰士がαだったように、他の生徒の中にもαが混じっていたりはしないのだろうか、と。 いつもの癖は輪をかけたように酷くなる。 目につく人間全てのバースを想像して、今まで以上に自分の番となるパートナーを無意識に探してる。 あぁでもこんな目で同級生を見てばかりいるのは変だ。不自然。 俺がΩだって周りに知られてしまったらどうする? なんの罪悪感もなく今までしてきたバースの値踏みが、急に後ろめたく思う。 こんなことばかりしていて自分のΩがばれてしまったら?それだけは避けたくて、俺は他人のバースなんか気にしないように頭を振って考えることをやめた。 「おはよ」 突如、肩にずしっと温かい重みを感じて振り返る。 「泰士、おはよう。っていうか重い!」 重いだけでなく、泰士がαとわかってしまったからか、αの香りがふわりと漂い俺の鼻腔をくすぐった。 なんとも言えない甘い抗いがたい香りに心臓がどくんと波打った。 この匂いを例えるならば空腹を満たしてくれるシュークリームみたいな、そんな甘ったるい匂い。 嗅ぎなれない匂いに一瞬呼吸を止めてしまった。 「ごめんごめん」と言いながら笑って離れていく泰士の身体が一抹の寂しさを残す。 「昨日早退しただろ?病院行ってきたの?」 「なんで……知ってるんだよ」 うわ、やばい。 どきどきしてきた……、だめだ、もっともっと離れてほしい。 「ただの勘だけど。で、どうだった?」 「どうって……薬もらってきただけだよ」 「飲んでるのか?」 「うん」 泰士には俺のΩ性がばれている。多分確定的だ。けれど正直に言ってしまっていいのだろうか。 俺はΩで泰士に今ドキドキしてますって言うのか? 泰士は友達。友達にこんなこと言ってもいいのか? 「ふうん。薬飲んでも可愛い匂いって漏れるんだな」 匂いが漏れていると言われ、反射的に項を手で覆った。 それを見て泰士が目を細める。 今までとは違う泰士の独特な雰囲気に俺の身体が緊張で硬くなる。

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