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第14話

そもそも発情の経験がなく、身近なΩは母親だけ。 その母親も今や閉経を迎え発情期があるのかすら知り得ない。 知らないが故か、俺は発情期を甘く見ていたのだ。 ちょっと我慢すれば乗り越えられるものだと楽観的に考えていた。 ところが状況は一転、予防的に飲んでいた薬なんて何の意味もなさないほど、俺の中心は硬く反り返るほど張り詰め、後孔からは滑る体液が滴り、まともに歩行するのが困難では?と錯覚に陥るほど発情期は物凄い勢いで始まった。 この時横にいたのが泰士でよかった。 俺は泰士の腕を掴み、縋るような眼差しで泰士を誘ったのだと思う。 俺の発情に気付いた泰士の表情が忘れられない。 発情した俺に対して泰士のように日頃爽やかなイケメンが、ギラついたイヤらしい顔をしていた。 「する?」と甘く聞かれれば、拒否する理性を失った俺は首を縦に振るしか選択の余地はなく、初めての発情期にして処女喪失するはめになってしまったのだ。 こうした経緯があり、現在こんな状況に陥ってるわけだけど、このセックスに何か意味があるのだろうか。 「すっげ濡れすぎ……ぬるぬるで気持ちいいな、秀哉」 「あぅ……、んっ、んッ」 尻がこんなに濡れるなんて思ってもみなかった。 まさにそこは雄を受け入れるための器官へと変貌を遂げ、その際奥に吐精されれば妊娠する可能性だってあるわけだ。 αとの発情期中の性交渉による着床率は非常に高いと聞く。 そしたら俺、どうなるの……? 快楽に翻弄されながらも、どこか残された冷静な部分が俺自身に問う。 いやだ……。俺は、好きな人と結ばれて、ちゃんと結婚してから子供を産むんだ……。 「は……、すっげ……締まる。あぁ、もう無理。秀哉、イくな?」 「あ……おれ、も、出そう……っ、た、たいしっ、中、出さないで……っ」 俺の言葉で泰士の動きが一瞬止まった気がした。すぐにまた、腰を激しく打ちつけられたので気のせいだったのかもしれない。 「一応ゴムしてんだけど……、まぁ秀哉がやだっつうならやめとく……っ、んっ」 「あぁっ……!」 泰士の返事を聞いてほっとした直後、後孔からずるりと泰士自身が抜き取られた。 発情期Ωとのセックスでαが射精する場合、性器の根本が膨らんで後孔との結合が深く強くなり、αの性器は射精が終わるまで抜けなくなる。

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