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第16話
もし、もしもこの場にいる泰士以外の奴らがαだったとしたら、俺は今非常に危険な状況に陥っているのではないか。
頭は正常に回らないが本能的に犯されるのではないかと脳のどこかで警告される。
こんな人数相手にしたらどうなるの?
その前に泰士は俺の味方なのか?
……あぁもう味方だろうが敵だろうがなんでもいい。全員とエッチしてみたい。
「校内にΩがいるなんて思わなかったな」
「きっつ……。すごい匂い。真鍋、あの子とやったの?」
「やったけど応急処置っていうか合意でだよ。取り敢えず薬飲ませないと」
「どうするんだ?早退させるのか?」
「そう。ここじゃ危ねぇし」
「手伝うよ。あれじゃ一人でまともに服も着られないだろ」
「ちょっと待った!秀哉に近づく前に確認させろ。お前ら抑制剤飲んでんだよな?」
「当たり前じゃん。こっちだって不当に犯罪者扱いされるのはごめんだし」
「へぇ、あの子、秀哉っていうんだ」
泰士が後ろの数人と話しているのが聞こえてきた。
俺をどうするか話しているのだと推測できた。
どうしよう?どうする?エッチしたいけど、しちゃいけない気がする。
逃げる?どこへ?どうやって?
その前にせめてスラックスだけでも穿かないと。
吐く息が熱い。まるで熱でうなされている時みたいに全身が気怠く、思うように手足が動かせず呼吸も荒い。αであれば俺がΩだとすぐに見抜くだろうけど、βの奴らはきっと俺をただの具合悪い生徒だと勘違いするだろう。
鞄を奪って、家に電話して車で迎えにきてもらおう。
その前に薬……。
何をどうすべきなのか冷静に判断できないのに、頭は逃げる算段を整えようとしている。
俺はのろのろと足首に引っ掛かっているスラックスを持ち上げた。
「秀哉!」
俺が顔を上げると泰士とその背後の数人が一緒に教室へ入ってきて、扉を閉め、カチリという音で内鍵を閉めたのだとわかった。
……マジで俺、まわされる……?
ここで全員に犯されて誰が父親かもわからないような妊娠をさせられ、十代で母親にでもなるのかな……。
ぼうっとそんなことを考えていると、泰士が発情抑制剤のアルミ包装を割って俺の目の前に錠剤を突き出してきた。
「今すぐこれ飲んで。誰か水持ってないか?」
「あ、俺持ってるよ」
「ほら……」
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