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第17話
泰士に言われるがまま俺は口を開いて薬を舌の上に乗せた。
手渡されたペットボトルを口に含もうとしたのだが、手がぶるぶると震え、まるでテレビなんかで見るアルコール中毒の親父みたいにうまく口元までペットボトルが運べない。
嘘だろ……。発情期って抱かれること以外のことができなくなるってことなの?
「貸して」
もたもたとしていたらペットボトルを誰かに奪われた。
熱と涙で潤んだ俺の視界に広い肩幅が入り込む。
シャツ越しに見てもわかる厚いであろう胸板。強く優し気な、αの香り。
αでも匂いが違うんだ……。
そんなことを考えていたら、肩を支えられ、くいっと顎を掬われて唇を塞がれた。キスされたのだと瞬時に気付いた。重ねた唇から冷たい水が流し込まれた。
水の冷たさが心地よくて、俺はそれを薬と一緒にこくりと飲み込んだ。
ゆっくりと唇が離れていき、次第にそいつの顔が露わになる。
意志の強そうな眉と切れ長の目元が印象的な、どこかで見たことのある顔だった。
「飲めた?」
優しく問われ、黙って頷く。その間にも勝手に俺の脳がこいつの品定めをし始める。
顔良し、肩幅及び胸の厚み良し、声良し、匂いについては文句なし。
めちゃくちゃカッコイイじゃないか。
「制服着るの手伝うよ」
更にまた別の生徒が俺のワイシャツのボタンを留める。
ふわふわとした茶色の髪が目の前で揺れた。
こいつはこいつで、いい匂いがした。αの香りに混じっているのは女物の香水の匂いだろうか。
いくら即効性のある薬を飲んだところで内服薬は多少効き目が表れるまでに時間がかかる。
薬は飲んだがまだ効いていない状態でαに囲まれ、その香りをダイレクトに嗅げば、俺の性器は節操なく反応してしまう。
「勃ってる。キレイな色だね。可愛い。一回出せば少し落ち着くかな。僕が触ってもいい?」
シャツのボタンを留めていた手を止め、茶髪が顔を上げた。
色素の薄い髪同様、眉も瞳もきれいな茶色で鼻梁は細く高く、和とは遠い顔立ちをしていた。
なんだよ、こいつもイケメンかよ。
「触るね?」
「たっ、泰士!たいし、にしてもらうから、大丈夫っ」
こいつの手が俺の勃った性器に触れる寸前、俺は無意識に泰士を呼んだ。
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