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第19話

俺が口を挟む間を与えずに母親は機関銃のようにしゃべり続ける。 「番になるのはちゃんと大人になってからよ!うっかり番になんてなってしまったら貴方が一番困るのよ。発情期の相手は唯一その人一人だけになってしまうの。どういうことかというと、番以外の相手とセックスできない体になるってことなのよ。もし相手のαがろくでもない人で秀哉が捨てられたなんてことになったら、あなたの人生における長い発情期を一人で苦しんで過ごすことになるの。だから簡単に項を許しては絶対にダメだからね!わかった?」 「えっと……俺誰ともまだ付き合うつもりないよ。告白とかされてねぇし。でもまぁその助言はちゃんと心に留めておくけど」 「ちょっと気が早かったかしら。番探しなんて秀哉のペースでいいのよ。ともかく項は絶対死守よ。今度項を守る為のベルト買いに行きましょうね。あ、お腹空いてない?」 「言われてみれば……空いたかも」 「喉越しのいいものがいいかしら。素麺でも茹でるわね。できたら運ぶからゆっくり休みなさいよ」 「うん」 ベッドの脇でしゃがみ込み熱弁を奮っていた母親が立ち上がり、「ネギあったかしら~」と言いながら俺の部屋から出ていった。 嵐が去った──。ほっと溜息を吐く。 項を守る為のベルトかぁ。首輪だなんてまるでイヌみたいだな。でもまぁ仕方ないのか……。 ぼんやりとそんなことを考えていると、意識を失うように眠ってしまった直前のことを思い出した。 俺、泰士とエッチしたんだよなぁ……。めっちゃ気持ちよかったんだけど、Ωの発情期って相当やばくないか。あの後到着したα達、最早誰でもいいからもっとエッチがしたいと思ってしまった。 母親の話が真実ならば、あの場にいた泰士を含めた全員が俺と付き合いたいと俺の母親に言ったことになる。 「そんなこと急に言われたってお互いのこと何も知らないんだから付き合える訳ねーじゃん……」 かと言って気心の知れた泰士と付き合えるかと聞かれても「うーん」と唸ってしまうことだろう。 しかしΩの幸せは多分αと番になることだ。 それは俺の本能がαに惹かれてしまうのと同様に、本能がそう言っているのだから間違いない。 それにαは希少。ヒエラルキーの頂点に君臨するαとの出会いも希少。現在のこの状況は極めて稀であり、今後どこでαに出会えるかはわからない。

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