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第29話
「え……嘘だろ。そんなの無理無理。大体何人いると思ってんだ。俺を含め5人だぞ。5股するつもりか!?」
「5股?そんなことするわけねぇじゃん。股がなくても、1人ずつ付き合ってみればいいだけだろ。どうせ向こうだってそれを望んでるんだろうし」
「……そこまで言うなら俺とも付き合えよ秀哉。俺とだけ友達関係とか不公平過ぎる」
「泰士は友達同士でエッチすんのか?普通はしないだろ。この時点で既に友達の域を越えてると思ってたけど違う?俺は泰士とバカやって笑い合うのが一番好き。泰士は違うのか?」
「それ親友枠じゃん……。エッチに関してはお互い不可抗力だ。本当はもっと優しく秀哉を抱いてみたい」
「優しく……」
ぼわっと顔が熱くなった。
優しくしてほしいと俺が思っていたことをそのままずばり泰士が言ったからだ。
泰士はほんと、気の合う友達だと思う。
居心地のいい友達みたいな番っていうのもアリなのかな……。
「そんな顔されたら引けねぇし。なぁ……、俺とも付き合うこと、真面目に考えてくれ」
「そんな顔って……どんなだよ」
少しだけぼうっとしてしまった。
自覚があるだけに気まずくて、慌てて泰士から視線を逸らした。
「どんなって、抱き締めたくなる顔だよ。可愛いってこと。なぁ、俺のことも考えて」
しつこいなぁ、もう。
「……った」
「え?」
ずっと大切な友達だと思ってたのに……。
「わかったって言ってんだろっ」
しょげた犬みたいな声出しやがって。
ずるいよそんなの。
「バカ泰士」
「もしダメでも、俺らは友達。それは変わらないし俺も変わらない」
「うん……」
棒立ちになっていた俺を泰士が壊れ物を触るみたいに、ふわりと抱き締めた。
俺は早速その日の夜、連絡先を交換したα達を共通のSNSへグループで招待し、俺の意向を伝えた。
互いを知る為に設けられた期間は1人1ヶ月。
発情抑制剤はもちろん互いに服用した上で、俺にヒートが訪れた時はその時付き合っている当人同士で収めることを約束した。
そして俺が一番最初に選んだのは、花村理(ハナムラオサム)。頑丈そうで男である俺が憧れちゃうような体躯を持つ、初ヒート時俺に口移しで水を飲ませてくれた人物だ。
どこかで見たことがあるなって思っていたら、うちの高校の生徒会長だった。
精悍な顔つきの美男子である我等が生徒会長様と俺なんかが付き合ってるって知れたら大変なことになりそうだけど、それでも俺は番となる相手を見付けたい。
ここからが幸せ探しのスタートだ。
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