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花村理

人の上に立つ人間にαが多いことは俺だって知っている。 人間社会の組織図をピラミッド型に表せばその頂点に君臨するのはαだ。 残念ながら成人前である俺たち高校生も同じピラミッドを形成していたりする。 恐らくその頂に属するモデルケースが現生徒会会長である花村理(ハナムラオサム)だ。 きりりと整った精悍な顔立ち、同じ高校生とは思えない肩幅と胸の厚みには男性美を感じる。優れているのは容貌だけではない。 学年トップクラスの頭脳と知性を併せ持ち生徒会を運営し生徒達を束ねているのだ。 そんな凄い人からアプローチされた俺って凄くないか? 「同じαでも泰士とは全然タイプが違うんだよなぁ。1コしか違わねぇのに大人って感じだし……。よし、送信」 えい、と手元のスマホで送信ボタンをタップした。 俺が1ヶ月交際のトップバッターに選んだのは花村理だった。 理由は一番誠実で堅実そうだったから。 泰士みたいにチャラついてるところが微塵も感じられないし、これはΩとしての俺の勘だけど、優秀な子種を持っていそう。 そんなことばかり考えているわけじゃないけど、αとの子孫を残すことをぼんやりとでも考えてしまい、やっぱりΩは産む側なんだと思い知らされる。 かと言って俺は花村先輩のこと全然知らないし勿論いきなり子供が欲しいだなんて思わない。 お互いを知るところから始めないとな。 その第一歩として、明日の昼飯一緒にどうですかとこうしてメッセージを送ったところだった。 返事は数分で返ってきた。 「何々。生徒会室でいいかな。明日は俺しかいないから……?」 てことは同じ部屋に2人きりってこと? え、ちょっと緊張するかも。 学食とか少し人目のあるところの方が俺は気楽だけど。 でも生徒会の仕事の都合で生徒会室って言ってるのかな。 俺は「うーん」と唸りながら少し悩んで、わかりましたと返事した。 翌日、いつも一緒に昼休みを過ごす泰士に断りを入れ、弁当を持って生徒会室へと向かった。 「なんでついてくんだよ、泰士!」 「別についてきてるわけじゃねぇし。こっちに俺も用事があるんだよ。言われなくても生徒会室の中まではついてかねぇよ」 「当たり前だ」 「危ないことされそうになったら大声出せよ。俺、その辺で弁当食ってるから」 「はぁ?その辺で食わなくていいし!他の奴らと食ってこいよ!」 「偶々この辺で食うことになったんだって。俺の他にも昼飯一緒に食う奴いるから安心しろよ。別に秀哉を見張ってるわけじゃねぇから」

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