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第40話

気になってしまうのは、どこからどう見てもやはり俺が花村先輩に不釣り合いなせい。 気にしすぎかもしれないというのはわかっているけど、やっぱり気になる。 どうしてもαとΩの間柄を疑われるのではと頭の片隅で考えてしまっていた。 「大丈夫だ。俺達は事実同じ高校の先輩と後輩だろう。違うか?」 俺の気持ちは見透かされているのだろうか。 先輩は俺を宥めるように優しく目を細めて言う。 「確かに先輩後輩の仲で間違ってはいないけど……」 おもむろに先輩の大きな手が頭に乗せられ、そのまま犬のように撫でられた。 どくんと心臓が跳ねて、身体が硬直した。 先輩の手はじっとしている俺の頭を何度も優しく撫でた。 先輩の落ち着いた低い声と柔らかい表情を見ていたら、何だか大丈夫な気がしてきた。 でも、どきどきする。 やっぱりこの人はαなんだと本能がそう俺に語りかける。 少し身体が熱くなった気がした。 不意に俺の頭を撫でていた先輩の手が止まり、不思議に思って先輩の顔を覗き込んだ。 「先輩?」 何か考え事でもしていたのか、俺の声で弾かれたように先輩が顔を上げた。 「あ、いや……。つかぬことを聞くが次の発情期はいつだ?抑制剤は飲んでいるのか?」 「一応2ヶ月先らしいんですけど、俺、この間の発情が初めてで実はまだ周期が確定してないんです。周期には個人差があるみたいで、毎月くる人もいるし2ヶ月に1度の人もいるし、でも一般的には3ヶ月に1度だそうなんですけど。で、俺は先月やったばかりで薬もやっと明けたところなんで今日は飲んでないんですけど……」 「そうか」 「えっと、……まさか、もしかして匂います?」 先輩の様子が急に変わったしまったので、もしかしてフェロモンでも漏れてしまったのではと自分で自分の脇や腕に顔を近付けてクンクンと臭いを嗅いでみた。 自分で自分のフェロモンを嗅ぎ分けできるはずもないのに我ながらアホな行動をとってしまった。 「ふふっ、自分のフェロモンが嗅げるわけないだろう」 「ああ、それもそうか。あ、先輩ならわかります?……わっ」 俺の頭に置かれていた先輩の手が後頭部に移動する。そのまま先輩の胸に顔を軽く押し付けられ、首筋の匂いを嗅がれてしまった。 すんすん、と空気を吸い込む先輩の鼻先が羽のように項の近くを擽る。 「ん……」 擽ったいだけでなく、ぞわりと背中に別の感覚が駆け巡り腰を捩った。 この下半身に直結する感覚は身に覚えがある。 抑制剤を飲んでいるのに泰士とエッチしたくなった時と一緒だ。 やばい、どうしよう。 尻が濡れたらアウトだ……。 頭の中はサーッと青ざめているのに、身体だけは熱く、俺はΩの身体を呪いたくなった。 クレープ屋はもう目の前だっていうのに。

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