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第41話
初めてのヒートで呼び寄せてしまった花村先輩をはじめとするα達に囲まれた時に感じたあの欲情は嘘じゃなかったのかもしれない。
あの時、その場にいたα全員と繋がりたいと思ってしまったのだから。
初めてのヒートで気が動転していたから?それともヒートを早く鎮めたい一心でそう願った?
違う。俺は沢山セックスして優秀なαの子種を沢山注いで欲しかったんだ。
最早αならば誰でも良い浅ましい体であることに間違いない。
どうしよう?
どうにもこうにも、もしこれが発情の始まりであれば、薬を飲んでやり過ごすしか手はない。
薬、持ってきてたよな……。
そんなことを考えている俺の頭から花村先輩の手が離れた。
先輩はその手で自分の鞄から黒い小瓶を取りだし、中に入っていた錠剤を口に入れた。
水を持っていないのだろう。先輩の口からガリガリと錠剤を噛み砕く音がする。
もしかして、いや、もしかしなくても多分、α特有の激情型発情……所謂ラット抑制剤を服用したのだろう。
先輩となら間違いが起きてもいいような気もするけれど、そう思ってしまうのもΩの性なのかもしれない。
そうだ、俺も薬飲まなきゃ。
慌てて鞄をごそごそと漁る。元々俺は雑な性格で几帳面とは程遠い。
薬は持ってる筈なのだが鞄のどこに入り込んだのか手探りで探す。
母さんが巾着の中にΩセットと称する薬の類いをまとめて入れておいたと言っていた。
薬、入ってんだよな……。
中身も確認せずに人任せにして良いものでもないと少し後悔した。
「確かにΩ特有の甘いフェロモンが漏れている。もしかすると中野の発情周期は短いのかもしれないな。薬はあるか?」
手探りでは見つけられず、学校指定のスポーツバッグを道端に置き、大きく入れ口を開けた。
しゃがんで中を覗き込む。
するとすぐに見つかった。
見慣れない紺の巾着袋がある。
「あっ、あった!多分これ!」
開けると頓服用の発情抑制剤、避妊薬、それから女性用の生理用ナプキンとタンポンが入っていた。
頓服薬を手にし、薬はわかるけど何でこんなものが?と、ナプキンとタンポンを白けた目で見詰めた。
俺女じゃねぇんだけど……。
母さん何考えてんだよ。自分の持ち物と間違えたのか?
いやでももう母さん必要ない筈だよな?
薬を口に入れながら母さんの用意したΩグッズを訝しく思っていたら、どろりと纏まった量の体液が後孔から溢れ出た。
力が抜けて、道路に尻餅を着く。
体が熱い。呼吸も乱れる。
やば……。これ、本格的なやつかも。
しゃがんだまま思考が停止する。
こういう時は一体どうしたら?
なかなか立ち上がらない俺に疑問を抱いたのだろう。花村先輩もしゃがみ込む。
先輩の息も少し荒い。俺のせいか?
「大丈夫か?」
全然大丈夫じゃない……!
顔も体もガチガチに強張る。
「ちょっとやばい……です……」
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