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第44話

「大丈夫だから体の力抜いて」 「はぁ、はぁ、ふ……」 呼吸は乱れ顔中の粘膜が潤み、小鼻がひくひくと小刻みに動いた。 なんだかもう訳がわからない。 どうしてこんなにも俺は興奮してるんだろう。 クレープを買うために尻を塞いでもらうから? いや違う。 このままじゃフェロモン駄々漏れになって、行き交う人々に迷惑をかけるから? それはその通りだ。 けれど俺が興奮してるのはそこじゃなかった。 蕩けた後孔に突っ込んでもらえる。 なんでもいいから入れて擦って欲しい。 ぶっちゃけると、花村先輩とエッチなことがしたい。 でも先輩はラット抑制剤飲んじゃったし、薬は効き始めているし、さっきよりも相当冷静を取り戻したようだ。 それに比べて俺は。 薬が効くまでなぜか時間がかかり、尻を濡らしながらセックスしたくて一人興奮しているイヤらしいΩという現状。 目尻にじわりと涙が滲む。 「うっ……んぅ、っ……っく」 ひくっとしゃくりあげると先輩が下着の中で手の動きを一旦止めた。 「泣いてるのか?どうした?これを中に入れるのが嫌なのか?」 「ち、ちが、違くって……」 先輩とエッチしたいんですーーーっ!! そう心で叫ぶが声に出す勇気はない。 一刻も早くこの淫らな尻に蓋をして薬が効くまでどこか穴の中にでも潜り込んでしまいたい。 「もしかしてこういうのを入れるのは初めてか?」 先輩が俺を気遣うように聞いてくれた。 俺はそこへ便乗して涙の理由をこじつけた。 「怖い?」 こく、こく、と首を縦に振る。 怖いのではなく、セックスしたいですか?に対する頷きだ。 「大丈夫。傷付けないようにする」 あぁ、もう俺の願いは叶わない。 セックス出来ないもどかしさと悲しみをふりはらうように、俺はまたこく、こく、と首を振った。 尻を割った先輩の指が滑りを掬いながら窄まりを探り当て、いつでも挿入可となってしまった後孔に指を入れた。 「ひ、─あぁっん、んぅ……」 「ここだな。痛くない?」 指がぐっと奥へと挿入されて待ち構えていた愉悦が下肢に広がり、背が反り返る。 「あぁっ、んっ、ぁんっ、アッ、アッ」 こんなイヤらしい声を上げながら、痛いはずないだろうと思う。 甘く喘いで、突っ込んで欲しいとアピールしているだけなのに。 「大丈夫そうだな。じゃあ入れるぞ」 そう言いながら先輩の指が抜け出ていく。 思わず「だめ」と口走ってしまい、それを皮切りに次々と本音が溢れ出す。 「や、やだ、やだっ、抜かないで……、もっと、もっと奥突いて、もっとぐちゅぐちゅって、してよ、せんぱいっ」 先輩の胸に顔を押し付けて喘ぎながら懇願する。 我慢ができない俺みたいなΩって本当のところどう思っているのだろう。 浅ましいと呆れるだろうか。 しかし、一旦外れてしまった理性の箍。 今更取り繕ったって無意味だ。

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