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第51話
「それも間違いじゃない。そういう仕事も中にはある」
「はぁ……」
俺の想像を遥かに越えた先輩のお家柄は、最早雲の上である規格外。
驚きこそすれ現実味が湧かず、リアクションが薄くなる。
「あまり驚かないんだな。これを誰かに言うと大概距離を置かれるんだ。遠巻きに見られ、顔色を窺われる。あまり気分のいいことではないから滅多に家のことは話さないんだが」
「いやいや、驚いてます。めっちゃ驚いてます。思考が追い付かないだけで……。なんかマンガみたい。先輩は絵に描いたように格好いいし、その上セレブなんですよね。すげぇ。やっぱりαの家系なんですか?あ、……俺ズケズケと色々聞いちゃってすみません!答えたくなければ答えなくても全然いいんですよ!俺気にしない質なんで」
「ふっ、ははっ、本当に面白いな中野。明るくてころころ表情は変わるし正直者で、まるで子犬みたいだ。可愛い」
先輩のくすっと笑いながら手を軽く握ってその手を口許に当てる仕草までもが大人っぽい。
横目でちらりと流し見られて、どきっとした。
「男が可愛くても仕方ないっていうか、俺なんてただ普通の男子高校生でΩだし、誉められるようなことは何も……」
どうして泰士然り、花村先輩然り、αの人間は俺をそんな優しい目で見るのだろうか。
勘違いしてしまいそうだ。
……泰士は確実に俺のこと好きみたいだけど。
──って、一先ず泰士のことは置いといて。
「しかし俺の目には中野がすごく可愛く映る」
「そう……っすか。あ、あざーっす!なんて、へへ」
どういう意味なんだろう?
エッチしたいとかそういうこと?
そんな話をしながら公園に辿り着いた俺達は、大きな楓の木の下にある長いベンチに腰を下ろした。
「いただきまーす」
できたてクレープの生クリームにスプーンを差して山盛り掬った。
フレッシュな生クリームは口の中で、ふわりと優しい甘さを広げながら溶けていく。
「ん~っっ、うまっ!!」
変に発情しかけて体力を消耗したからか、クレープの甘さが身体中に染み渡るようだった。
俺のエネルギー源として細胞が体内に取り込もうとしているような気がした。
「先輩!ほんとに美味しい!一口食べますか?」
くるりと隣に座る先輩へ顔を向けると、先輩もツナマヨのクレープを頬張っている。
その姿が少し幼く見えて、何だか可愛らしい。
「いや、遠慮しとく。気持ちは嬉しい。ありがとう」
むぐむぐしながら先輩が応える。
もしかしてものすごく腹が減っていたのかな。
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