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「――デート?」
学校が終わり、迎えの車に乗っているとき。契は学校であった出来事を氷高に話してみた。「あの一件」以来、とくに変わりなく接してくる氷高。本当にあの出来事は氷高にとってはなんでもないことなのだと認識した契は、自らも同じように何事もなかったように接していた。今日もいつもの調子で、氷高に話しかけてみる。そうすれば氷高は、相変わらずの穏やかな口調で返事をしてくる。
「せっかくのデート、お断りしたんですか?」
「えっ……だって、デートとか言って何をしたらいいのかわらかないし。別にどうでもいい人とデートしたいとも思わないし」
「そうですか……そういえば契さまは今までデートをしたことがないんですか?」
「ないよ」
うーん、と氷高は考えたように顎に手を当てている。よくリムジンを片手運転なんてするな……と契は氷高をひやひやしながら見つめていたが、運転は相変わらずの安全運転。やがて氷高はハンドルを両手で握り直して、思いついたようにすっきりとした顔で微笑む。
「では、私とデートしましょう。練習だと思って」
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