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「……氷高って……私服持ってたんだ……」  屋敷に帰って、「デート」の準備を終えた契は待ち合わせ場所のロビーで待っていた。デートと言っても氷高とするわけだから、気合なんて入れても仕方ない。年上である氷高と並んでも子供っぽく見えない服を選んで、とりあえずといった感じで身支度はしてきた。  氷高はいつもどおり燕尾服を着てくるだろうか……なんて、正直思っていた。だから、私服を着てでてきた彼に、契は度肝を抜かれた。 「少しおまたせしてしまいましたね、すみません」  氷高の私服は、いつものカチッとした印象とは正反対の、ゆったりとした雰囲気のもの。程よく体のラインのでる明るい色のカーディガンに、ジーンズ。髪はいつもよりも少し崩している。  まるで、雑誌からでてきたモデルのようだった。氷高はスタイルがいいため、かなりキマっている。普段は燕尾服ばかり着ているから気付かなかったが……彼はかなり、かっこいいのでは。  いつもとは違った雰囲気の氷高に何故かドキドキとしてしまって、契はふいっと目を逸らす。そんな契を見つめ、氷高はくすくすと笑っていた。 「契さまのお召し物は、いつもよりも大人っぽいんですね。素敵です」 「……あ、ありがとう」 「その格好なら私とラブホテルにも入れるかもしれませんね」 「……ら、ラブホてる……? なにそれ」 「失礼、冗談です」  氷高はてれてれとしている契の隣に立つと、そっと契の手をとる。そして、ぎょっと肩を跳ねさせた契に微笑みかけた。 「じゃあ、いきましょう。契さま。私とデートに」

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