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「ん……ん……」
舌が、絡まる。やっぱり、気持ち悪くなんてならない。
契は自分のなかにはいってきた氷高の舌を感じて、ほっとした。ディープキスなんてものをするというから、身構えてしまった。舌と舌を絡めるって、どんな感覚なんだろう。そんなことを考えて緊張してしまっていたが……氷高のそれは、気持ち悪いどころか、……気持ちいい。
触れた部分が熱くて、溶けてしまいそうになって。頭のなかがぼーっとしてきて、体中がじんじんとしてきて。
「……!」
気持ちいい。もっと、したい。
無意識に、契は舌をのばしていた。自ら、氷高のものと絡めたのである。
氷高は一瞬びくりと震えたが、やがて。少し優しめのディープキスだったものを、激しくしていった。タガが外れてしまいそうになった。
遠慮がちに差し込まれた契の舌を吸い上げて、丁寧に丁寧にそれを舐る。歯茎の裏、舌の表面から裏まで、口の中をじっくりと愛撫した。
「ん……んん……」
(なに、これ……きもちいい……おかしくなりそう……)
激しくなってきた氷高の責めに、契は結局ついていくことができなかった。ぐっと舌をのばして、申し訳程度に動かしてはみるが、ほぼされるがまま。くちゅくちゅと咥内をかきまわされて、蕩けた声をこぼすことしかできない。
こんなに、気持ちいいんだ。氷高との、ディープキスって、こんなに。
契はうっとりとして、氷高の背に腕をまわす。もっと、彼を深いところまで受け入れたい。彼になら――浸食されても、いい。
「あ……」
「ん、契さま……、……顔、……とろとろになってます」
「え……」
頭のなかが真っ白。まともなことを考えられなくなって、飛んでいきそうになったとき。氷高の舌が引き抜かれる。
はあ、はあ、と呼吸を整えていけば……少しずつ、思考が戻ってくる。
……俺、今とんでもないことを考えていたような。
「ばっ……ば、ばか! お、おまえ、こんな破廉恥なこと……!」
「キス、気持ちよかったですか……?」
「えっ……そ、……そんなわけ、」
「俺は……すごく、気持ちよかった」
氷高に思いっきりほだされそうになった。それに焦った契は、氷高の言葉を焦って否定しようとしたが。氷高が嬉しそうにほほえんで、ぎゅっと抱きしめてきて。その否定は、口からでてこなかった。
「……契さま。契さまとのキスは、本当に気持ちいい」
「な、な……」
「ほんとうに……ねえ、契さま」
……そんな、嬉しそうな顔で言うな。そんな、俺にしか見せないような優しい眼差しで見つめるな。幸せそうに笑うな。
そっと目を合わせられ、頬を撫でられる。氷高を見ていると、拒絶なんてできなくて。むしろ、どきどきしてきてしまって。
ゆっくりとシャツの中に入ってきたその手を、振り払えない。
「……もういっかい、キスをしてもいいですか」
とくん、心臓が跳ねる。
聞くなよ。言わせるな。察しろよ。
はあはあと甘い吐息をこぼしながら、契は氷高を見上げる。じっと答えを待っている氷高の表情は、すごく熱っぽい。答えを発した瞬間に契の唇に噛みついてきそうなその顔に、契は胸が痛むくらいに鼓動が高鳴った。
でも、言えなくて。
『気持ちいいから、もっとして欲しい』なんて言えなくて。
契はそっと氷高の肩を掴んで、ゆっくりと引き寄せた。そして、目を閉じて……そっと、自分から口づけた。
「ん……」
氷高の唇が、僅かに震えた。しかし、すぐさまそのキスに応えてきた。契の体が、桃色に染まる。氷高が再び、深いキスを仕掛けてきたからだ。
甘く、とろけるような。ひとつになってしまうような、溶けてしまうような。そんなディープキス。頭の中が真っ白になって、こんなに気持ちいいことがこの世のなかにあるんだって。そう思って、契は甘い声を漏らす。
「ん……んん……」
服の中にはいってきた手が、優しく体をなで回す。暖かくて、大きな手のひら。じんじんとした気持ちよさが撫でられたところから広がっていって、契は体をくねらせる。
たぶん、これ、エッチなことをされる。
それを察したけれど。気持ちよくて、胸がきゅんきゅんして、氷高のことを突き放せない。むしろ、もっとして欲しい。
乳首をきゅうっと摘まれ、ぴくんっ……と腰を跳ねさせながら、契は迷いを払拭させてゆく。恥ずかしくて、いやらしいこと。それでも、氷高相手なのだから、受け入れてしまってもいいんじゃないか、と。
「あぁっ……」
「契さま、」
「んっ……ん、……」
息継ぎの合間に、蕩けた声が漏れる。そしてまた、唇をふさがれる。
ふーふーと息が漏れて、涙がこぼれてきて。逃がすことのできない快楽が、体の中で渦巻いて。どんどん、どんどん、体が敏感になってゆく。
「んっ……!」
下着の中に手を突っ込まれて、契の体がびくんと跳ねた。もう、さわられれることが嫌じゃない。気持ちよくて、もっと奥のほうまで来て欲しい。氷高のキスが、理性を溶かしていっている。
契はねだるように舌をのばして、自らキスを深めていった。こうしているとなんだか胸のあたりがふわふわとして幸せな気分になってくる。
「はぁっ……は、……」
「契さま……」
「あっ……んっ……」
なかに指をいれられて、掻き回された。くちゅくちゅと音が鳴ると共に、契の口からは可愛い声が漏れてしまう。
――契が氷高の侵入を許すのは、二回目だ。しかし、前よりもずっと、体は氷高を受け入れている。氷高が……こんなにも興奮した様子で自分の体を暴いている、その事実に契は昂揚したからだ。彼がこうして暴きたいと願うのは自分だけだ、そう思うと強い優越感を覚えて、もっと氷高に体を開かれたいと思ってしまう。
「んっ、あっ――あっ、」
「契さま、ひとつになりたい、」
「あぅっ……ひだかっ、……」
「契さま……」
ベルトを外す氷高、焦るようにわずかもたつくその手つき。それを、契はうっとりとした目で見つめていた。
そう、彼は……俺だけに首ったけ。俺だけ、俺だけが……こうして彼の心を捕らえている。
「はやく――氷高、はやく」
思わずこぼれた、氷高を急かす言葉。それが、氷高の理性を完全に砕いた。
はあはあと辛そうにしている契にがばっと覆い被さり、猛りを契のやわらかくなったソコにあてがう。そして、ぐっと腰を押し込むようにして、奥までいれていった。
「はぁっ――あ、あぁ、あっ……!」
「契、さま……!」
「ひだ、か……あっ……あぁっ……」
砕かれた理性は、氷高を制することができず。氷高は、欲望のままに契を突き上げた。ずんっ、ずんっ、と激しく揺さぶられて、契はあられもない声をあげ続ける。氷高にがつがつと犯されることが、紛れもない快楽となっていた。
「もっと、……もっと、……ひだか、……」
「契さま、……かわいい、……」
「あっ……ぁん、あっ……はぅっ……」
この激しさが、たまらない。征服するほどの勢いで突き上げてくる氷高が、たまらない。めちゃくちゃにされる悦びに、契は酔う。彼の熱視線に、狂いそう。
速度を増してゆく抽挿に、契の声はいっそう艶を増した。苦しげに眉を寄せた氷高の顔に、胸がぎゅんっと締め付けられる。
「契さま、イっても、いいですか……このまま……!」
「あっ、はぁっ、い、イって……俺の、なかで……イって……!」
「契、さま……!」
契は脚を氷高の腰に絡めて、ぐっと引き寄せた。
そう、この執事が溺れていいのは、俺だけ。俺以外の人に、こんな風になるなんて、絶対に許さない。
主人の維持と、わきあがる独占欲。なぜこんなにも氷高を自分だけのものにしたいのか、それを契には理解することができなかった。できなかったけれど……とにかく、氷高を放したくない。
「あっ……」
氷高は導かれるままに、契のなかで達した。びゅるる、となかに精を放って、ぐっと契を掻き抱く。
どくんどくんと、契のなかが氷高の熱で満たされてゆく。その感覚に、氷高はたまらない征服感を覚えて、恍惚と目を閉じた。
「ひだか……」
「……、はい、」
なかにだされて、とろんとした契が、ぽそりと氷高の名を呼ぶ。氷高がそっと体を起こして、契の目をのぞき込めば。
「……ん、」
契が、ちゅ、とふれるだけのキスをしてきた。
「えっ、契さま……」
「んー……」
しかし、氷高がびっくり仰天したのも、束の間。契はやはり、すーっと意識を失うようにして……眠ってしまった。
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