「ねえ～昨日の『としカレ』みた!?」 「みた！　やばくない!?　リーチくんかっこよすぎなんだけど！」 　クラスの女子が、きゃーきゃーと騒いでいる。いつも飽きもせず、テレビの話とか歌手の話とかをしている、彼女たち。いつもの契なら「いつもお疲れさまです」と思いながら聞き流すところであるが……この、彼女たちの話している内容に、契はちょっとだけ興味がある。 　というのも。 　『としカレ』もとい『年下彼氏』というドラマは、『リーチくん』もとい『篠田(しのだ)莉一(りいち)』という主演俳優が、とあるバラエティー番組で宣伝していたドラマだ。そのときの回に、契の母もゲスト出演していたため、契もその宣伝を見ていたのだ。 　篠田莉一、という俳優は、最近でてきた実力派俳優。演技力もさることながら、そのずば抜けた容姿のおかげで、人気急上昇。今や彼の名を聞かない日がないくらいに、人気の俳優となっている。 　あまり芸能に興味がない契も、その篠田莉一という俳優だけは気になっていた。単純に、すごいな、と思っていたのだ。尊敬する母の隣に並んでもその若さが目立たないくらいの貫禄、そして謙虚で賢い彼の人間性。男として、彼にあこがれるのは仕方のないこと。 　ただ……男である自分が女子たちに喜々として話に混ざりにいっても気持ち悪いかな、と思って、契はその会話を聞き流していた。心の中で、何度も何度もうなずきながら。