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「主人公のミランダは、アイズという貴族の屋敷にメイドとして雇ってもらったが、アイズは嗜虐趣味を持っていて、美しいミランダに日々過激な仕置きと褒美を与えてゆく」 「……、あの、……な、なんでこの映画を……今……」 「いや……俺の好きなクレール監督が唯一手がけたポルノ映画だっていうからなんとなく録画していたんだけど……ちょうど、契が映画を観たいっていうからこれを一緒にみようかなって」 「いっ、意味がわからない! ほ、ほかにいろんなの録画していたのに、なんでこのチョイス……」 「――君が、どのくらい俺の命令を聞いてくれるのか、知りたくて」  ぷ、と第一ボタンを外されて、契はびくっと肩を震わせた。  本当に……やるらしい。エッチな映画を観ながらエッチなことを、してしまうらしい。何が氷高に火をつけたのかは謎であるが、この微妙にマニアックなプレイを半強制的にやらされることに、契は妙な高揚感を覚えていた。  黙って顔を赤くしている契を見て、氷高がくすくすと笑う。映画のオープニングが終わると、氷高はリモコンを手に取ってなにやら操作をした。どうやら字幕を消したようで……その意図がわからなかった契は、顔にはてなを浮かべながら氷高の顔を顧みる。 「契は、フランス語わからないよね。俺が字幕に代わって翻訳してあげる」 「えっ、字幕でいいじゃないですか」 「ううん。俺の言葉で、翻訳するから。字幕じゃダメ」 「……、?」  にこ、と笑った氷高の表情の裏に、ろくでもないものがあると、契はすぐにわかった。しかし、それが一体何なのか、まではわからない。 「あ、」  氷高は一体何をするつもりなのだろう。緊張で、呼吸が少しだけ乱れてしまう。そんな契の目に映ったのは――画面いっぱいに映る、男女。スーツを着た男と、メイド服を着た女。メイド服を着た女は何かを言いながら男から逃れようとしているが、男は女を後ろから抱きしめて、がしりと胸を掴む。そして、びくっと体を揺らした女の胸を下から揉みあげる。 「……、」  初めて見る、ポルノだった。  契は、こういったいやらしいものを見たことがない。クラスメイトから話を聞く程度で、実際に目にしたのはこれが初めてだった。  高慢そうな男が、悶える女を手籠めにしてゆく。女の豊満な胸が、男にやりたい放題にされている。女の顔が徐々に上気していって、声に色が帯びてゆく。 「あっ……」  初めて見た、男と女の性的なふれあい。契は、それをみてかあっと顔が赤く染めていった。見てはいけないものをみているという背徳感が、興奮を煽る。徐々に男に身を委ね始めてきた女に、なぜか――自分を重ねてしまう。  は、は、と契の呼吸が浅くなっていった。画面に映る女と同じように、後ろから抱きしめられ、体を熱くしてしまう。そう、契は主人に乱されているこのメイドと同じように、今、氷高に後ろから抱きしめられていて。 「――契」 「……ッ、」  ――画面に映る男が、女の耳元に唇を寄せて、彼女の名を呼ぶ。それと同時に、氷高も契の耳元で名前を囁いた。  ……氷高が字幕を消した理由を、ここで理解した。氷高は男の唇の動きに合わせて、そして、言ってきたのだ。 「君は俺に絶対服従だ。……いいね?」 「~~ッ、」  ゾクゾク、と体の奥が震えた。氷高の甘い声が、脳髄まで染み渡ってゆくようだ。  映画とわざと似たシチュエーションに落とし込み、そして、セリフは契に向かって囁く。映画のヒロインが感じている快楽と、今自分自身が氷高から与えられている熱が同調して、わけのわからない快感に頭の中が犯されてゆく。 「あ、……んぁ……」 「もうこんなにここを濡らして……誰がこんなにしていいって命令したの? 悪い子だね。お仕置きを与えなくちゃ」  するり、と氷高の繊細な手が契の下着の中に滑り込む。  言われたとおり、契の下着のなかは先走りでぬるぬるになっていた。いやらしいシーンを見ただけでこんな風になってしまったことが恥ずかしかったが、先走りは止まるどころかどんどんあふれてゆく。  氷高の、映画のセリフをいじっているらしい意地悪な言葉も原因だ。あの氷高に、「お仕置き」なんて言われたら……体の奥がきゅんきゅんしてしまうのは仕方ない。しかしそれ以上に、この状況が契にとっては強烈すぎた。実際に自分の秘部を触っているのは、氷高の細い指。いつも見惚れている、綺麗に爪の整った、まるでピアニストのような指だ。しかし、映像にでてくる手は……ごつごつとした逞しい手。細い指で秘部をいじられながら、映像のせいで頭の中では太い指にいじられている。

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