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レストランから出て、契は車で莉一のマンションに向かうことになった。とりあえず落ち着くまで、契は莉一のマンションに泊まることになったのだ。
契は車に乗ってしばらくすると、うたたねを始めてしまった。氷高の件でショックを受け、莉一との会話に気を荒げて、精神的に疲れてしまったのだろう。
莉一はそんな契の寝顔を横目で見つめながら、ついつい苦笑してしまう。
「……もどかしいなあ、君たち」
契の想いも、氷高の想いも、決して大きく食い違っているわけではない。けれど、お互いの想いが強すぎて、なかなか重なろうとしない。
契を敬愛するあまりに一方的な想いに留まろうとする氷高と、氷高の幸せを想うあまりに氷高と関係を結ばないようにしている契。今回の拗れもそれが原因だ。もしも氷高が契の想いに少しでも気付いていれば、「女性と二人きりになる」という行為自体を拒否できた。自分のなかの想いだけを判断基準にしていたから、「デートでなければ二人きりになっても大丈夫」と判断してしまったのだ。そして、契も氷高にはっきりと怒りを示していればよかった。それなのに契は氷高の行動を咎めることができなかった。
きっと、二人はこれからも何度もすれ違うだろう。そんな未来を感じて、莉一は苦笑いすることしかできない。
『世界一のご主人様になる』
この二人にとって、この約束はどこまでも重く、どこまでも眩いもののようだった。
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