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「貴方に恋をしていると自覚した時から、俺は自分自身が怖いと感じるようになりました」  氷高は契をベッドに押し倒すなり、そんなことを言いだした。契はそんな氷高を見上げ、その瞳の奥の感情をのぞき込む。  彼の中にいつもあったのは――抑えきれないほどの恋慕と、そして、葛藤。契のことを愛するがあまり、愛することに躊躇いを覚えてしまう、罪の意識にも似た迷いだった。それは、どうしようもない氷高悠維という人間性。幼いころから神様のように焦がれていた人がいて、その人に恋をしてしまったという人生が作り出した、苦しい恋心。  契も、氷高のその苦しみを理解していたつもりだった。理解していたけれど、自分自身の恋心を制御するのに必死で、氷高を救う余裕がなかった。  契もまた――氷高のことを愛するがあまり、氷高ときちんと向き合うことができないでいた。 「昔は、ただ傍にいれるなら幸せだと――そう思うくらいだった。けれど、貴方のことが好きだと自覚した瞬間に、想いが抑えられなくなる。傍にいるだけでは足りなくて、貴方の体も、心も、魂さえも――欲しくなる。そんな自分が怖かった。怖かったんです……」 「今も、怖い?」 「……いいえ」  氷高がどさりと契に覆いかぶさる。ちゅ、と首筋を吸われ、契は「あっ……」と甘い声を漏らした。ぴく、ぴく、と甘やかに体を震わせながら、契はそっと氷高を抱きしめる。 「貴方の言葉が……俺を救ってくれた。今は……貴方の全部が欲しいって、心から思えるんです」 「……よかった。氷高がそう思ってくれるの、嬉しい。やっと、気持ちが重なったみたいで」 「契さまも、俺と同じ気持ち……」 「……うん、同じ気持ち」  氷高が契の唇を奪い、そしてシャツのボタンをはずしてゆく。少し焦っているのか、いつもよりも手つきがもたついている。そんな氷高を見つめる契の瞳は、どこまでも深い愛おしさに満ちている。  ボタンを半分ほど外したところで、氷高は耐えきれなくなったのか、現れた素肌に口付けてきた。余裕のない彼の表情に契もドキドキとしてしまって、いつもよりも敏感になってしまう。ちゅ、と肌を吸われただけで、大げさなくらいに腰を跳ね上げてしまった。 「あっ……!」 「契さま、……肌、熱いですね、……」 「だっ、て……あっ……あっ……」  一回の口付けのたびに、びくん、びくん、と契は体を震わせる。縋るように氷高の頭に手を添えて、蠱惑的に腰をくねらせて、氷高を煽るには十分すぎる契の様子に、氷高の興奮はさらに上昇してゆく。早急な手つきで契の服を脱がせ、乱暴にベッドの下に放り投げ、さらけ出されたその体に自分を刻んでゆく。 「んっ……!」  氷高が契のペニスに口付けた。ずくんっ、と質量のある快楽が突き上げてきて、契は思わず体を縮こませる。しかし、氷高にそこを愛撫されているという興奮が、逃げようとする体を押さえつけた。ちらりと氷高を見下ろしてみれば、ペニスを愛撫する氷高があまりにも背徳的で、ゾクゾクとしてしまう。完全に勃ってしまった自分のペニスと、そしてそれを愛でる氷高――見つめているとおかしくなってしまいそうで、眩暈すらも覚えた。 「ここも、可愛いです……契さま。こんなに堅くして……」 「変なこと、言うな……あっ、……あぁっ……」 「可愛い……」  氷高が契の手に触れてくる。言葉もなく、指を絡めてぎゅっと手を握った。少し汗ばんだ手を繋げば、氷高のペニスへの愛撫に愛を感じて、きゅんとしてしまう。契は氷高の手を握りしめ、甘い声をあげながら……少しずつ、昇りつめていった。ペニスから先走りをとろとろとこぼしてしまって、愛撫がどんどん蕩けるように甘いものへ変化していった。 「あっ……あぅ……ひだか……あんっ……あ……」 「可愛いですよ……契さま……」 「あっ……いきそう、……ひだか……いくっ……いく……」 「では、俺の口のなかに」 「だめ、……あっ、あっ……だめ、……あっ……いっ……いく……、……あ……」  くちゅくちゅと音がするようになって、自分のそこがとろとろに蕩けていると自覚させられて、そしてそのまま責め立てられて。契は抵抗も虚しく、氷高の口の中で、果てた。うっとりと目を閉じながら、氷高の口内へどぷどぷと精液を出してしまう。  されるがままに、イかされた。そう思うと、もっと氷高に自分を暴いて欲しくなる。「足を開いて」と優しい声で命令されて、契は言われた通りにかぱ……と脚を開脚させた。 「ひだか……」 「はい」 「はずかしい、……」 「ふふ、そうですか」 「あっ……ひだか……」  契が羞恥を訴えると、氷高は嬉しそうに笑う。そして、開かれた脚を掴むと、さらにぐっと押し込んで開かせた。  恥ずかしいことをさせて、させられて。お互いの全てを奪い、奪われる。そんな行為に酔いしれた。こんなに恥ずかしい行為は、お互いしか知らない。もっといやらしいことをしたいし、されたい。お互いの全てを欲しいと願った二人のなかで、もう理性など息をしていなかった。

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