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契が快楽に濡れた瞳で氷高を見つめれば、氷高は切なげに微笑んだ。契への愛おしさがあふれ出て、胸が苦しい。氷高は衝動のままに契の唇を奪って、ぎゅっとその体を抱きしめる。
「ん……」
契も氷高の背に腕を回し、淑やかに目を閉じる。そして、氷高が抽挿をゆっくりと再開すれば、そのリズムに合わせて自らも腰を揺らした。ほんのわずかの熱も取りこぼさないように、二人の間に生まれた快楽を拾い集めるように――。
「んっ……んっ……」
優しくシーツの擦れる音が耳を霞める。くちゅくちゅと水音が艶やかに響く。こぼれる吐息は甘く、あふれる声は切なく。
触れ合った肌は汗ばんでいて、抱きしめ合っていると過ぎるくらいに暖かかった。熱が溶け合えば、自分の心の中の想いが救われていくような――そんな気がした。
「契さま、……契さま、……好き、……好きです……契さま……」
「氷高、……俺、……、……俺も、――」
快感がせりあがってくる。まだ伝えるべきではないと、その言葉を抑え込もうとした理性が、崩れてゆく。契は溢れる想いを氷高に言葉で伝えたくて仕方なかったが、それでもなんとか耐えようとした。まだ、自分は足りないのだと、彼の全てを奪うには足りない男なのだと、そう思って。
しかし――そんな契の想いに気付いたのか。氷高は契のその理性を崩すべく――一気に、腰を振る速度をあげた。ズンズンと激しく突き上げられ、契はあまりの快楽に涙を流し、のけぞってゆく。
「あ――……」
ふつ、と契の限界の糸が切れたその瞬間。氷高はぐんっ、と腰を強く突き出した。そして――そのまま、最奥に精を注ぎ込む。
契はなかに出されたと感じると同時に、氷高への愛おしさが爆発してしまった。じわ、となかが徐々に氷高の温もりで満たされていくと、その幸せに胸が痛くてたまらなくなって。
そして、蕩けるような声で、囁いたのだ。
「ひだか、――……だいすき……」
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