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家につくと、早速波折が料理の支度を始めた。袋から食材を出して、テーブルにならべる。食器や道具の位置を沙良に確認する。作る料理は夕紀の希望でハンバーグになった。ひき肉やパン粉、それらしい材料をみて沙良はそわそわとし始める。
「な、波折先輩……俺は何をすれば!」
「……玉ねぎみじん切りして」
「はい!」
波折がつくる、とは言ったものの、結局は沙良が料理の仕方を覚えるためにほとんどの作業を沙良がやることになった。波折が細かく指示をだしながら、沙良の作業をみている。
「ちょっと、沙良……」
「はい?」
「おまえ中学のとき家庭科でやんなかったの……包丁の使い方!」
「えー、俺が下手すぎて包丁つかう作業は同じ班の友達がやってました」
「……」
玉ねぎを切ろうとした沙良を、波折が慌てて止める。持ち方やら構えやら、色々と危なっかしかったから。
「あっ、」
波折はため息をついて、沙良の後ろに立つ。そして、沙良を抱きすくめるようにして、沙良の手の上から包丁と玉ねぎを持った。
「あ、あっ、波折せんぱ、」
「こっちじゃない、手元を見て」
「は、はい」」
波折の髪から、自分と同じシャンプーのいい匂い。触れ合ったところは、じんわりと暖かくなってゆく。自分のよりもすべすべな波折の手のひらの感触が、伝わってくる。
波折が手を動かして包丁の使い方を教えてくれているものの、正直頭にはいってこなかった。波折のことで頭がいっぱいだった。
この調子でずっと最後まで教えてくれるのだろうか。最後までもつかな、なんて情けないことを沙良は考えはじめてしまっていた。
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