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「動画のこと……鑓水先輩は知ってるんですか」
「慧太? 知ってるけど」
「……ふうん」
鑓水は動画のことを知っていながら波折のことを好きらしい、と沙良は鑓水もなかなか本気で波折のことが好きなのだと焦ってしまう。沙良も動画のことを知っても波折への恋心が薄れることはなかったが、どうしてもそういったことをやめて欲しいという気持ちが湧いてくる。波折がなんと言おうと、波折のことを好きである以上波折がおかしなことをしていると嫌だと思ってしまうのだ。
「……ご主人様って誰ですか」
「言えない」
「成人ですか?」
「うん」
「……犯罪じゃないですか」
大人の男に波折は色々といやらしいことをされているらしい。あの動画のような。大人が男子高生にそんなことをするなんて許せない、そう思いつつうっかり沙良は動画の内容を思い出して赤面してしまう。波折よりも体格がしっかりしていて肌も少し黒くて、そんな男がこの華奢な波折をイジメているのかぁ……なんて。
「……!」
悶々と沙良がしだした時。足音が近づいてきた。二人はギョッとして辺りを見渡すが、もう奥まできてしまっていて隠れようがない。やばい、そう思った沙良は咄嗟に近くに合ったロッカーの中に波折を引っ張り込んだ。そして音がたたないようにそっと扉を閉める。
「……あっ」
扉に空いた穴からそっと外を覗けば、教室に入って来ていたのは堅苦しく厳しいことで有名な教員だった。これは見つかったら面倒なことになるぞ……と二人は息を呑む。彼は色々と細かく資料を見たりしているためなかなか外に出ていこうとしない。ロッカーに二人で入るのは結構狭く苦しさを感じ始めたため、早く出て行ってくれないかなあと必死に願う。
「……」
それにしても。
近い。自分と波折の距離があまりにも近い、というか密着していて、沙良は冷や汗が止まらなかった。波折は沙良に抱きつくような体勢でいるため、目の前には波折の白くて綺麗なうなじがある。いい匂いがするし、抱きしめれば波折の身体は柔らかくて、細くて……なんだかいけない気分になってしまう。そう、波折の体つきはいやらしい。たしかに男の身体で、女の子と並べばたくましく見える。でも、ゴツゴツはしていなくて滑らかだ。肌がすべすべとしていて少しやわらかい。華奢なのに抱きしめるとふかふかする。男なのに。なよっとしているわけでもなく男らしさがちゃんと残っているから、この微妙なオンナっぽさがいやらしいのだ。
……そんな体つきになっているのは、幼いころから調教なんてされているからだろうか。小さい頃から、まるでオンナのように抱かれていやらしいことばかりされていたから。
「んっ……」
波折先輩がエロいのはちょっとどきどきするけど、それにしても腹立つな、「ご主人様」とやらはほんとなんなんだよ、と沙良がイライラとし始めたとき。波折が小さく身動ぐ。どうしたかな、と思ったがすぐにその原因を理解する。
自分の手が、波折のお尻に触れている。故意ではないにしろ、波折のお尻をナデナデとしてしまっていたらしい。しかしロッカーが狭すぎて上手く手を移動できない。ごめんね波折先輩、と心の中で謝った……が、手が変なものに触れる。波折のお尻の割れ目のあたりに、何かがある。もちろん、服の中に仕込んでいるようではたからみてもバレないようにはなっている。なんだこれ、と思って沙良がそれを布の上から掴んでグイグイと動かすと……
「ッ……! ~~ッ!!」
波折がビクビクッ、と震えて首をふるふると振りながら沙良にしがみついた。
こ、これはもしかして。
沙良は波折のお尻の間にあるものの正体を察する。おそらく、波折はお尻の中にオモチャを挿れているのだ。触った感触からすると、ディルドだろうか。バイブ機能はないにしてもこんなものを挿れて登校してくるとは……。
「……波折先輩……生徒会長がこんなことしちゃだめでしょ……」
「んっ……ん~~ッ」
ぼそ、と囁きながら沙良はオモチャをグイグイと動かす。声をあげれば外にいる先生にバレる、と波折は必死に声を堪えながら震えていた。沙良の肩口に顔をうずめてはふはふと辛そうに息をしている。動画サイトの件で気が立っていた沙良はエッチなことばかりしている波折にオシオキでもしてやろうと波折のお尻を責め立てた。
「波折先輩……だめなんですよ、こういうことばっかりしちゃ」
「ぁっ……ふ、……んっ……ぁあ……」
「ご主人様に調教とかされて……せめて特定の恋人でもつくってそういうことしてください」
「んっんっ……」
「……俺なら、ちゃんと波折先輩のことを愛します。あんなことしません」
「ぁぅっ……んっ……ふっ……ぁあん……」
「波折先輩……俺にしてよ」
「んんっ……ぁッ……~~ッ……んっ、んっ、ん~~ッ」
ビクンッ、ビクンッ、と波折が震える。ガクガクと脚を震わせ、必死に沙良にしがみつきながら、波折はイッてしまった。
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