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「……、」
外から、ガラッと扉が閉められる音が聞こえた。どうやら、教員が教室から出て行ったらしい。
しかし、沙良の衝動は収まらなかった。自分の腕の中で甘い声をあげている彼が、知らない誰かの奴隷になっていることが許せなかった。
「……ッ、さら……!?」
沙良はロッカーからでようとはしない。そのままの状態で、波折のベルトを外していく。いつもよりも遠慮のない沙良の行動に波折は驚いてしまったようだ。目をパチパチとさせながら沙良の行動を見守っている。
「……どうして、「ご主人様」から離れることができないんですか」
「……っ、俺が……ご主人様に染まっているから……」
「今からだって逃げられるでしょう」
「無理……」
「どうして!」
「無理なものは無理……!」
波折は下を完全に脱がされてしまって硬直してしまう。そして、再びお尻の間のオモチャを握られて、ビクッとのけぞった。
「波折先輩……あなたがされていることは、おかしいんですよ。そして、逃げようとしないあなたも!」
「わかってる……あっ……あうっ……! わかってるよ、……あんっ……!」
「わかってるならやめてください」
「できないっていってるっ……ひゃっ……ああっ……!」
波折のなかに突っ込まれていたものは、やはりディルドだった。直接触れることになったため、先ほどよりも激しい抽挿が可能になる。苛々のままに沙良はディルドでめちゃくちゃに波折のなかを掻き回してゆく。
「やっ……さら……! ほっといて、……おれのことは、ほっといて、……はぁんっ……! あぁっ……あっ……!」
「放っておくわけないだろ、俺は波折先輩がそんなことをしていることが許せない、もっと普通の高校生らしい生き方をして欲しいのに、」
「かんけいないっ……さらには、かんけい……あっ……ひゃあっ……! あんっ、あっ、あぁっ……!」
ぐちゅぐちゅとロッカーの中に激しい水音が響く。波折がばたばたと暴れるせいで、ロッカーがガタガタと揺れてうるさい。波折は沙良にしがみつきながらも立っていることが苦しいようで、ぼろぼろと泣きながら喘いでいる。
「――波折先輩にとっては関係無くても……! 俺は波折先輩のことが好きだから放っておけないんだよ!」
「あッ……! あぁッ! ~~ッ!!」
波折は二度目の絶頂を迎える。ぎゅうっとお尻のなかが締まったせいか、ディルドが押し出されて外にでてきた。ディルドが転げ落ちてしまわないように押し戻してやれば、波折が一層激しく震える。
「はぁっ……さら……」
はあはあと息をしている波折を抱きながら、沙良はロッカーの扉をあける。熱気が一気に冷やされて、清々しい空気が肌に触れた。立っているのが辛そうな波折をそっと本棚に寄りかかるように座らせると、沙良はその正面に座る。波折は沙良の視線から逃げるように目を逸らしていた。
「……さら。ほっといて」
「嫌です」
「……ほっといてよ……」
波折がぐしぐしと濡れた目を擦りながら乱れた服を直している。ディルドをちゃんと挿れて、そして服を着る。一日中挿れてるつもりかよ、と沙良は口元をひきつらせながら尋ねてみた。
「……それも、「ご主人様」ですか?」
「……それ?」
「……だから、波折先輩が挿れてるやつ……」
「これ? ちがうよ、これは慧太」
「……ああ!?」
まさかの名前に沙良がびっくり仰天していると、波折がディルドの玉袋のあたりを服の上からさすさすと擦って、顔を赤らめる。自分で擦っておきながらその微妙な振動に「んっ」といやらしい声をあげてなんかいた。
「これ、慧太のだと思って挿れていろって」
「えっ、ええ……無理やりじゃないんですよね……それは」
「無理やりじゃないよ。これ太いから、ずっとはいっているって感じがしてドキドキして、俺すごく気持ちいい」
「……」
鑓水の変態っぷりに思わず引きそうになったが、彼は波折のことを好きらしいし「ご主人様」みたいに波折を洗脳じみたことはしていない。鑓水のしていることについて自分は咎める権利はない、と沙良はディルドについての言及はやめた。
しかし。鑓水のやっていることに嫌悪感は抱かないが嫉妬は抱いてしまう。鑓水のペニスとしてディルドをアナルに挿れていることに、波折が悦んでいるのだから。沙良はむっとして波折のカーディガンとシャツを一緒にめくり上げた。
「さら?」
「じゃあこれ、俺だと思って一日すごしてください」
「へっ?」
沙良は鞄から絆創膏を取り出すと、波折の両方の乳首に貼ってやる。ぎゅっと乳首を潰すようにして押し込んで貼ってやれば、波折が「ひんっ……」と鳴いた。
「……鑓水先輩と付き合ってないんですよね」
「つきあってない、よ……あ、……ふぁっ……」
絆創膏の上から、指でくるくると乳首を撫でてやる。波折がぴくぴくと身体を震わせながらのけぞって、沙良を涙目で見つめた。
「さらぁ……やっ、ん……」
「「ご主人様」とやらは許せないし鑓水先輩には負けたくないです……」
「んっ……んっ……うぅ……」
「俺、波折先輩のことすっごく想っているんですよ」
「やっ……だめっ……さら、だめ……」
乳首にもどかしい刺激を与えられながら沙良の想いを聞かされて、波折はひんひんと鳴きながら首を振る。絆創膏越しの刺激が直接触られる時とはまた違って、腰が砕けてしまう。気付けば波折はぱかりとだらしなく開脚して悶えていた。
「あっ……」
廊下からパタパタと誰かが走る音がきこえて、二人は我にかえる。パッと時計を見てみれば、そろそろ朝のホームルームが始まる時間だ。沙良は波折の服を直してやると、彼を抱きかかえるようにして立たせてやる。
「波折先輩……ちゃんと「ご主人様」から離れようって考えてみてくださいよ」
「……」
波折の涙を指で拭ってやれば、波折はきゅ、と唇を噛んで沙良を見つめてきた。濡れた瞳で、切なげにそんな風に見つめられて思わず沙良の心臓が高なってしまう。衝動的にキスをしてしまいそうになったがそれは耐えて、波折の手を引いて教室の出口まで誘導してやる。
「……」
教室からでる瞬間、波折が自らもう一度涙を拭い、いつもの「生徒会長」顔に戻ったのは……やっぱり変だな、と思った。そこまでして自分を偽る必要がどこにあるのだろう、と。
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