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***  劇場をでて、二人はおみやげ屋に向かった。お菓子やぬいぐるみ、キーホルダーなど色々と売っているそこは老若男女問わず人で溢れていた。波折はキャラ物を身につけているイメージがないがこういうペンギンやアザラシなど動物を模したグッズに興味があるのだろうか、と沙良が波折の表情を伺ってみれば、案外楽しそうに商品を見ている。 「波折先輩ってこういうの好きですか?」 「んー……買ったことはないけど、可愛いと思う」  可愛いのはおまえだー、と心のなかで突っ込みながら沙良は波折が見ていたストラップを一つ手に取る。金属のシンプルなマスコットのついた、皮のストラップだ。あざとい可愛さはないがよく見ると皮に海の生物が刻印されていてゆるい雰囲気がある。 「おそろいとかしてみますか」 「……おそろい」  波折がじっと沙良の持っているストラップを見つめる。あれ、おそろいとかは女々しすぎたか、と沙良が自分の発言に後悔したが、波折はぱっと顔をあげるとふふっと笑い出した。 「おそろいとかむず痒い響き」 「うっ……じょ、冗談ですよ、なしなし、今のなし」 「いいよ、おそろいで買おう」  波折が棚から一つストラップを手にとって、沙良に見せつける。にこ、と笑ったものだから、きゅんとしてしまって沙良は思わず顔を逸らした。それからとなりに置いてあったビーズでつくられたストラップを夕紀へのおみやげとして手にとって、レジに向かう。後ろのほうで、カップルが「おそろいで買おう」といった会話をしていて、沙良はなんとなく赤面した。

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