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*** 「あっ……けいたっ……」  波折が鑓水の上で激しく腰を振っている。鑓水と手を繋いで、そしてベッドが喧しい程にギシギシと軋む、それくらいに腰を振る。ひんひんと泣きながら、何度も何度も達しながら、それでも自ら揺れていた。 「はぁっ……あぁあっ……! けいたっ……! ぁあっ……!」 「波折っ……はげしい、……」 「もっと……もっと、けいたが欲しい、の……あっ……! あっ、あっ……いくっ……あっ……!」  「あーっ……」と悲鳴にも似た声をあげながら、波折がまたイッてしまう。あんまりにも波折の動きが激しくて、鑓水は珍しく翻弄されていた。押し倒してこっちから責めてやろうなんて気にもなれない。早々に達してしまわないように耐えるので必死だった。 「波折っ……どうした、……おい……」 「けいたっ……」  ばふ、と波折が鑓水の上に倒れこむ。そして、ぎゅっと抱きついてぐすぐすと泣きだした。 「……波折? おまえ、ちょっと変だよ」 「……けいた……ねえ……ずっと、一緒にいてくれるよね」 「当たり前だろ……なんだよ、……どうした」 「俺が……俺が、たとえ、魔女だとしても」 「……あ?」  波折の言葉に、鑓水は固まった。魔女?魔女っていったら今の時代における大罪人。波折に魔女なんて言われても、ピンとこない。 「……なんつーたとえしてんだよ。大丈夫だって、ずっとそばにいるから」 「うん……うん……やくそく」  鑓水はハハ、と笑って波折を撫でる。波折は急にどうしたのだろう。ずっと篠崎のもとに監禁まがいのことをされて、寂しかったのだろうか。だからそんなたとえまで持ちだして、離れないでと懇願しているのだろうか。 「波折、ほら」 「?」  鑓水がす、と小指を波折に差し出す。波折は頭の上にハテナを浮かべて首をかしげていたが、やがて嬉しそうに笑うと、自分の小指を鑓水のそれに絡めた。 「……約束。俺、何があってもおまえのそばにいるよ」 「……嬉しい」  小指を絡めたまま、波折は鑓水にキスをした。鑓水は静かに目を閉じて、それを受け入れる。 ――もし、波折が魔女だったら? ――関係ねえよ、それなら俺も魔女になってやる。

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