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「――綺麗になったかな」
JSの生徒にとって今日は休日とはいっても、一般的には平日。社会人やほかの学生たちはいつもどおり出勤だの通学だのをしている。そういうわけで、今神藤家には沙良一人だった。夜からはクラスで学園祭の打ち上げがあって、それより少し前に友人たちと待ち合わせをしている。だからそれまで沙良は暇だった。
暇、ということで沙良がやっていたのは、仏壇の掃除。母の遺影が飾られているそこを綺麗にして、沙良はふうとため息をつく。
「母さん、」
沙良は仏壇の前に座ると、写真に向かって語りかける。
幼いころに亡くした母。彼女との思い出はほとんどないけれど、記憶の片隅できらきらとしている彼女の笑顔は、いつまでも忘れない。
「最近、俺、好きな人がいるよ。可愛くて、ちょっと不思議なところもあるけど俺、本当に好きなんだ。でも、俺よりもずっと成績がよくて、生徒みんなから憧れられている……そんな人。俺はその人を好きだけど、負けたくない。あの人を追い越せるくらいにならないと、だめなんだ。あの人に負けないように頑張って……俺、絶対に裁判官になるよ。もう二度と、母さんのような人を生まないために……魔女は絶対にこの世から消してみせる」
遺影の母は、微笑んでいる。沙良は彼女に微笑みかけて、決意を胸に立ち上がる。
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