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――学園祭明けの、登校日。生徒たちはどこか気怠げに登校してきている。そんななかを鑓水と波折も歩いて行って、校門を抜けていった。きらきらと朝日が差し込む校舎は、まさしく夢からあけたような雰囲気を醸し出している。ほんの数日前まで学園祭の舞台だったここは、もういつもどおりの学び舎となっていた。
「あ……」
二人が二年の教室に向かおうとしたところで、一人の男と鉢合わせる。
「お早うございます」
「おはよう、鑓水くん、波折」
淺羽だ。淺羽はにこやかな笑顔を向けて二人の横を通り抜けていったが……鑓水は彼のある一点を凝視して、立ち止まってしまう。
「……慧太? どうしたの?」
「……いや」
波折が不思議そうに鑓水に尋ねれば、鑓水はなんでもないと軽く頭を振って再び歩き出す。
(金のバッヂ……)
鑓水が淺羽について気になったのは――胸につけている、金色の記章だ。金色の記章は、一等裁判官の証。二等裁判官は銀の記章、三等裁判官は記章なしであるため、彼は一等裁判官ということになる。
一つの地区にいる一等裁判官は極小数だ。錫の言っていた「あの人」は、一等裁判官。
(まさか……)
浮かび上がる一つの疑惑。鑓水ははやる鼓動をおさえ、首をかしげる波折の隣を、無言で歩いて行った。
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