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放課後となって沙良が生徒会室にいけば、すでに波折と鑓水が中にいた。今日一日、重い空気が校内には漂っていたが、二人はそういつもと雰囲気は変わっていない。二人は生徒会に入れるくらいだし裁判官になる志も周りとは違うのかと思って、そこまで沙良は疑ってはかからなかった。
「篠崎さんのことは、残念でしたね」
「ああ、そうだね」
沙良は二人にどう声をかければいいのか、一瞬迷ったが当たり障りのないことを言ってみる。以前波折が篠崎に強姦されかけたところを目撃しているため、今回の篠崎の殺害を波折がどう思っているのか沙良には想像がつかなかった。そんな波折は沙良に声をかけられると、なんともないといった様子で相槌をうつばかり。
「……」
波折を見つめる瞳に、猜疑の色はない。そんな沙良を鑓水は黙って見つめていた。波折のことを、何一つ疑っていないのか……と沙良の鈍さにため息をつきたくなる。ただそれは鑓水が細かいことが気になって少しでも怪しければ疑ってしまう、そして篠崎の死までに様々な情報を得ていたから波折の裏に勘付いたわけであって沙良は条件が違う。沙良は、どちらかと言えば一般的な思考を持っている。まさか、自分の好きな普段柔らかな雰囲気を持つ人が、いくら襲われたことがあるからってその人を殺すなんては思わないだろう。
「俺の周りの奴らさ、みんなしてJS辞めたいとか言い出したけどさ、神藤はそういうこと考えたりしない?」
「思わないです。俺はそういったみんなが恐れる魔女を退治するために裁判官になりたいので」
「魔女だったら、どんな奴でも退治する?」
なんとなく、鑓水は沙良に話を振ってみる。
「します」
「じゃあ、もし俺が魔女になったら?」
「……なおさら。鑓水先輩が魔女なら、全力で俺が、退治します」
「だろうなー! おまえ俺のこと敵視してるだろ」
「いや」
波折がハラハラとした様子で、鑓水を見つめている。いつ口を滑らせないか、不安なのだろう。
ただべつに、鑓水は自分たちのことを沙良に教えたいのではなく。
「俺、鑓水先輩のこと、一応尊敬してますよ。一応。好きです、先輩として。だからこそ、鑓水先輩が悪いことをしたら絶対に止める」
「……一応、って」
沙良の言葉を聞いて安心したかった。まだ沙良は篠崎を殺害した犯人には気付かないだろう。しかし、いずれ必ず知ることになる。そのときに、自分たちを確実に止めてくれると沙良の口から聞きたかった。
沙良の言葉を聞いて、鑓水はへらっと笑う。心のつっかえがとれたような気分だ。ちらりと波折を見下ろしてみれば……波折もわずかに嬉しそうにしていた。
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