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第7話

服越しに伝わる熱にぞわりと鳥肌が立つ。 怒りで高ぶっていた熱が一気に下がり、冷や汗が背筋に流れた。 「いい匂い」 彼の後頭部に鼻を埋めた男は何度も深呼吸をしている。その度に生温かい息で髪が揺れて肌に触れる。 暴力が途端に淫猥に変わり、彼の目に涙が溢れてきた。 男は髪に埋めていた顔をずらして耳と首筋を往き来するように匂いを嗅いでいる。 「ひっ、ゆ、許してっ」 「ん?どうしたの?」 「ご、ごめんなさいっ」 「何が?」 「や、やめっ」 尻に股間を何度も何度も押しつけて、男は厭らしく腰をうねらせている。 この男のせいで、自分の感情がコントロールできない。怒りに満ち溢れたかと思えば恐怖に支配される。俺はどうすればいいんだ。 自分が自分でないような感覚に、不安しかない。 気が付けば、許して許してと泣いていた。 「許して欲しいの?」 その言葉に何度も頷いた。 「じゃあ、俺を見てキスしてって言って」 「えっ」 「早く」 「き、キスして下さい・・」 「いい子」 首を目一杯後ろに捻り泣き顔で強請れば、優しく笑った男が唇を合わせた。力の入った彼の唇を男がベロッと舐めると彼の目が見開いた。 「気が付いた?」 「舌に・・」 男が舌を見せるように伸ばせば、舌の中心に銀色の玉が見える。 「ピアスだよ。これでさ、フェラされたら気持ちいいと思わない?」 驚きにピアスから目を離せないでいるその隙に、男はまたキスして彼の咥内へ舌を滑り込ませた。 「や、だっ」 咥内を蠢く舌に付いたピアスが時折違う刺激を与えて彼の体が跳ねる。 「いずれは俺とお揃いにしてあげるからね」 俺の舌にピアスを開けるというのか? あんな所に。あんなに分厚い肉に。 想像しただけで痛みが走る気がした。

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