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第15話
男の言葉の意味と、今から自分の身に起こることとが繋がり、智紀は小刻みに首を振り不安と恐怖に表情を強張らせた。
「動くと失敗するよ」
男は左手で舌を掴んだまま、右手をベッド脇へ伸ばし何かを取り上げた。
「運命の相手と出会えたときのためにずっと前から用意して置いたんだ。今日は記念日だ」
そう言いながら、ヒヤリとした器具が智紀の舌を挟み固定した。
挟まれた舌は裏の筋が痛いくらいに引っ張られ、ガーゼで消毒された。
「大丈夫。俺を信じて」
宥めるような声とは対照的に、智紀の目の前にニードルがかざされた。
その鋭利に尖った先を見ているだけでゾクリと身震いをしたくなるほど痛そうだ。
「い、いやだっ、たすけてっ」
回らない口で訴えるが、男は耳を傾ける事もせず、ニードルの先を舌にそっとあてがった。
「いい声で啼いてね」
逃れられない状況に、智紀はぎゅっと目を瞑り拳を握りしめる。
チクリとした痛みを感じたかと思えば、容赦なく舌を抉っていく痛みに智紀は目を見開いた。
「あああっ!」
「ウッ・・そんなに締めつけないで」
痛さで全身に力が入った智紀の体内に、痛いくらいに締めつけられた男はイってしまいそうなのを堪えた。
「いい顔・・」
男はうっとりしながらも、ニードルを突き刺す手は止めない。
わざとなのか、ゆっくりゆっくり長く続く痛みに智紀は気がおかしくなりそうだった。
舌裏まで貫通する頃には、涎と血で智紀の口元は汚れていた。
男は慣れた手つきでニードルを最後まで刺しきり、末端に取り付けてあったストレートバーベルを通し、ボールキャッチを止めて抗生物質入りの軟膏を塗ってから、ようやく智紀の舌を解放した。
「似合ってるよ」
自分の印を付けた智紀を見てとても満足そうな男は、褒めるように優しいキスをあちこちに降らせた。
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