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第18話
状況を把握した男は一歩ずつ智紀に近づいていく。
「焦ると周りが見えなくなるよね」
そっと包むように、男が智紀を後ろから抱き締めた。
「上と下に鍵がかかってるのに開くわけないよ」
男の指差す方を見てみると、自分で取り付けたのだろう南京錠が二カ所ついていた。
「ッ・・」
「熱がこんなにあるのに動いたらダメだよ」
男が抱き締める智紀の体は焼けるように熱く火照っていた。逃げることしか頭になく、それを原動力に体を動かしていた智紀だったが、それが叶わないと頭が判断した途端、物凄い倦怠感に襲われた。
「おいで。傷をみてあげる」
「い、嫌だっ・・嫌だっ」
智紀は、腰を抱く男の腕を払い除けようとするが力が入らず、なんの抵抗にもならない。
譫言のようにイヤだイヤだと繰り返し、泣き続けた。
「舌を出して」
ベッドに連れ戻された智紀は、熱のせいで抵抗もできない体を組み敷かれ、腰に跨がる男に恐る恐る舌を伸ばした。
「ああ、痛そうだね。ピアスが舌に食い込んでる」
倍近く腫れ上がった舌を見る男は楽しそうに微笑み、ピアスにそっと触れた。
「ああッ」
「今軟膏を塗ってあげる。それと鎮痛剤も飲むといい」
ボールキャッチを撫で回され、まだ安定していないピアスホールが痛む。
軟膏を塗り終えた指が一旦離れ、痛みから解放された智紀は安堵したが、次に舌の付け根辺りまで指を差し込まれ、反射的に嘔吐いた。
焦った智紀が喉を鳴らせば固形物が喉を通っていくのがわかる。
「ちゃんと飲めたね。偉い偉い。でもお仕置きもしっかりしておかないと」
熱にうなされる智紀を撫でた後、男は腰の上から退いて智紀の脚を開き抱えた。
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