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第23話
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智則が意識を飛ばして数時間が過ぎた。
ビクともしなかった智則の体が動き出し、シーツを擦る音が聞こえる。
部屋には時計もなく、窓があるだろう所には分厚いカーテンがかかり、外の様子はなにも分からず今何時なのかも不明だ。
「うっ、ッ──」
上半身を起こした智則は眉間に皺を寄せて険しい表情をした。
酷く怠い下半身が重く、いないはずの男のモノがまだ挿っているような感覚に悔しさが滲む。
意識を飛ばす前の行為が蘇り、ゴクリと生唾を飲み込んだ智則はぐるりと部屋を見渡した。
また人の気配がない。
逃げ出すチャンスだ。
一瞬過ぎった思いはすぐに打ち消された。
何時間も続いた痛いくらいの快楽…。今感じている自分の体の怠さと違和感が物語っている。
逃げるのは…ダメだ…。
「喉が渇いた…」
カサカサに渇いた唇を舐めた智則は素足を床に降ろした。
ベッドに突いた手に力を込めて立とうとすると。
「アッ?!」
ドタンっ。
踏ん張りきれなかった足は自分の物じゃないかのように崩れて智則は床に倒れてしまった。
「ッ、くそ…」
もう一度立ち上がろうとするが、体が言うことを聞いてくれない。
自分が情けなくて拳で床を殴った時だ。
「智則、どうしたの?」
部屋のドアが開く音に慌てて顔を上げると、男が立っていた。
「ち、ちがう!こ、こ、これはっ!」
また逃げだそうとしていると思われたら何をされるか分からない。
智則は首を振り、恐怖でどもってしまう言葉を必死に吐き出そうとしている。
「お風呂に行こうか」
「え?」
「綺麗に洗ってあげる」
勘違いされずに済んだ事に胸をなで下ろしたかったが、軽々と体を抱き上げられて戸惑う。
ここで暴れてもいいことは絶対にない。もし、反抗でもしようものなら確実にこのまま硬い床へ突き落とされる。
男に抱き上げられるのは恥ずかしいが、ここは素直になろう。
落ちないように智則が男の首にそっと腕を回すと、男は嬉しそうに口角を上げた。
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