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第36話
男が最上階のボタンを押すとドアはゆっくり閉まった。
密室になった箱が浮上していく中、智則の手首を掴んでいた男の指が動き出し、智則の指に絡む。思わずビクリと反応した智則は俯いていた顔を上げて斜め前に立つ男を見たがこちらに振り向く気配はない。
指を扱くように触られる感触に、智則はゴクリと喉仏を上下させた。
それはドアが開くまで続き、無抵抗の智則は簡単に男の部屋に連れ込まれた。
玄関の鍵を閉めた男が智則の手首を強く引いて重たいドアへ体を叩きつけるように迫り、唇に噛みついた。
その勢いで頭打ったせいか一瞬眩暈を覚えたが、口内を舐め回す舌の熱さに意識がすぐに戻る。
「ンッ、ン、ぁッ、」
唾液を混ぜ合いながら男の舌が智則の舌を掬うと、智則も恐る恐るそれに応えるように舌を動かした。お互いに空いたピアスを確かめ合うかのように深く唇を合わせて大胆に舌を絡め合う。
智則は苦しそうに鼻に通る喘ぎを漏らして、腰を揺らしている。
「っ、はあっ、や、ら…」
微かな隙間から声が漏れたが、喋るのを許さないとでも言うように男の唇がそれを追い掛けて一層を激しく唇を合わせてきた。
智則の喘ぎ声が大きくなるに連れて腰の動きも大胆になっていく。ドアに押しつけられた智則の手が拳を作ると、腰が前へ突き出て小刻みに揺れた。
「…智則…キスでイったの?」
ニタリと笑う男に射精した直後の顔を覗かれ、智則の喉がまたゴクリと鳴った。
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