22 / 87

第22話

母『……な…………すか…………は!』 ?『す…………せ……ど…………あ…………』 ………………あれ、俺、いつの間に寝たんだ…… 寝返りを打つとズキッといたんだ背中にため息が漏れる……………… そうだ…………俺、あの人に蹴られて………… 立ち上がろうと頑張るのだが指一本動かすことができない……………… なんて軟弱なんだ………………もう……なにもしたくない……………… 自分の体に絶望していたその時…… タンタンタン…… 母『困りますっ!』 ?『けれど、彼から電話があったものですから……彼の部屋はここですか?…………』 母『そうですけど……あ、ちょっとっ!!』 階段を上る複数の足音………… 誰…………?…………誰なの………… ガチャ……と音がしてドアノブが回る…… 扉が開き…………見えた姿に涙が溢れそうになる……………… あぁ、玲が……来てくれた………… 嬉しさにニコリと弱く玲に笑いかける 玲がそんな俺を見てわなわなと震えている…… 俺の目の前にしゃがみ、今にも泣きそうな、それでいて怒りに満ち溢れている顔をしていた…… そんな顔…………どうしたの……? 苦しそう……俺の……せい……? そぉっと腕を伸ばしたが力が入らず玲の頬をかすめただけだった……………… 撫でたかったのに…………少しがっかりしていると すごい勢いで俺の手を掴んできた…… 玲「ごめんっ……ごめんな、朱雨………… こんなになるまで……気が付かないなんて…… ほんと……ごめん…………」 ボロボロと泣きだしてしまった玲…… ……ふは……泣き虫だな…バカれい…………… つられて、俺まで泣いてしまった………… 玲が助けにきてくれた………… 俺の電話に気がついて………… すごく嬉しかった……………… それに……俺の名前…… 呼ぶなっていったのに……呼んでくれた…… 自分の名前がこの世で1番嫌いだった…… 親に嫌われ……親戚に嫌われ……αという性にも見捨てられたこの俺が…………嫌いだったはずなのに………… ……………初めて…………自分の名前が…………自分のことが好きになれそうだ…………………… 玲が俺に謝ると……俺の手にすりすりと頬ずりをする…………チュッチュと手にキスを落としてくれる………………それはいいのだが………… ……なんで手なんだよ…………と…自分の手に嫉妬してしまいそうになった………… 腹が立ったので……玲の首の後ろに手を回し自分の顔に近づける ギョッとした顔の玲……… ………ごめん……嫌だよね……俺にキスされるなんて……でも……今だけ許して………………………… 玲のその反応に少し痛んだ胸を無視してその薄い綺麗な唇に吸い付く……………… 吸い付いた瞬間、ピリリとした快感が俺の体を走る………… なにこれ…………キスって…………こんな気持ちいの……? ………………知らなかった……こんな気持ち…… ……心が満たされるような…………だけど全く足りない…………そんな感覚………………もっと……もっとって…………強請りたくなる……………… たまらなくなった俺はぺろりと玲の唇を舐める………… すると玲の目が驚きにカッと開かれる………… ……や、やばい…………やりすぎた…………嫌だったよね……ごめん……玲………… そう思い、すっと離れようとしたのに…… ガッと俺の肩を掴み、抱きしめると……そのまま抱き上げられる………… 朱「ふ、ふぇ!?」 玲「帰るぞ、俺の家に……」 母「ちょっと!!!まちなさいっ!まってっ………」 叫んでいる母の横を通り過ぎ、家の外を目指す玲…………………… 不安になった俺はチラリと玲の顔を見る…… するとなにかに耐えているような……苦しそうな顔をしていた………… ツキンと胸が痛む…… そんなに嫌だったのか……キス……………… 玲のその顔に泣き出してしまいそうになる……………………ダメだ…………泣くな………抑えろ………俺……………… ……こんなのわかってた事じゃないか………… …確かに……少し期待した…………もしかしたら……玲は俺を愛してくれるんじゃないか…………一緒に恋してもらえるんじゃないか……そう思った…………けれど…………勘違いだったみたいだ……………… 胸をぎゅっと抑えると痛みに耐えるように目を強く瞑る……………… そんな俺を心配そうな顔をして見下ろしている玲に、俺は全く気が付かなかった………………

ともだちにシェアしよう!