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第34話

玲「はい、もしもし……」 電話に出たが、向こうが静かだ いたずら電話か?と思いケータイ画面をもう一度見る しっかりと〘藤原朱雨〙の文字が見えた 嫌な予感が胸に広がる 藤原からの電話は初めてだ 掛けてくる電話が無言ということは、よっぽどの事があったのだろう 玲「藤原……藤原っ!」 朱「た……けて…………れい…………」 小さい声だったが、助けを求められた 切羽詰まったような、切ない声に胸が締め付けられる………… 俺は電話を切ると急いで支度をし、家を飛び出し、彼の家へ向かった ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ピンポーン 母『はい』 玲「東堂玲といいます。朱雨さんいらっしゃいますか?」 インターホン越しに訝しげに見つめられる 母『いま、朱雨はいませんが?』 玲「そうですか…………届け物を預けてもいいですか? 先生から預かっていて」 母『…………はぁ、わかりました』 渋々だが動いてくれた もちろん、預かり物などない だが多分こうでもしないと、用があるだけでは開けてもらえないだろう なんでもいい、中に入って、彼を助けられれば………… ガチャと音がなり、玄関があく その瞬間、扉に足を挟み、閉められないようにする 藤原のお母さんはびっくりした顔をして、一生懸命閉めようと思い切り、扉を引っ張る そのせいで挟まれた足が悲鳴をあげる その必死さに、朱雨が危険なんだと察する 扉を両手でググッと引っ張れば、ゆっくりとだが開けることが出来た すきまがある程度開いた瞬間、体を中に滑り込ませる 母「な、なんなんですか、あなたは!」 玲「すみません、どこに朱雨はいますか? ………………あぁ、2階ですね」 俺が、彼はどこか、と問うとスーッと上に視線を向けた彼女に2階にいるのだとわかり、その体を押しのけ、後ろにある階段を上る 母「なにするの!!!やめなさい!」 玲「朱雨に用事があるもので……すみません」 彼女が必死に俺を引き止める だが彼女の力などたかがしれている 少し強く押せば、彼女が尻もちをついて転んだ それを冷たく見つめると、階段を上がり、藤原の扉を探す しゅう……しゅう…………あった、これだ 扉に〘SYU〙と看板がかけられている 入ろうとドアノブに手をかけた途端、グイッと後ろから強い力で服を引っ張られる 静かに後ろに向き直り、彼女と対峙する そこには俺を睨みつけながら、必死な顔をした彼女がいた 母「困りますっ!」 ?「けれど、彼から電話があったものですから……彼の部屋はここですか?…………」 母「そうですけど……あ、ちょっとっ!!」 未だに引き留めようと必死な彼女の体を剥がし、ドアノブに手をかけ扉を開ける 目にした姿を見て、怒りが湧いてきた………… 藤原…………なんでこんなことに…………

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