36 / 87

第36話

玲「藤原……ふーじーわーらっ!!」 朱「ひゃいっ!!!」 玲「ははっ、家ついたぞ?可愛い返事だな~?」 ぼーっとしている藤原に話しかける どうしたんだろう………… さっきからずっとなにかについて悩んでいるように見える …………もしかして……キス引きずってるのか…… そんなに嫌だったのかと……少しツキンと胸が痛む………… その事を考えないように、玄関の扉を開き、藤原を下ろす 朱「っぁっ………………っく………………」 玲「どうした?!いたいか?やはり……」 朱「たいしたこと……ない…………大丈夫……」 大丈夫、そう言っているその顔は、全く大丈夫じゃなかった………… 今にも泣きそうな、辛そうな顔をしていて、耐えられなくなった………… 俺じゃ支えられない………… …………そう痛感した………… 俺は…………このセリフを言うべきじゃなかった………… だが、自分の中の黒い感情を隠すかのように、藤原にそのセリフを言ったのだった………… 玲「やはり、お前の彼氏を呼んだほうがいい……」 朱「っえ?…………か、彼氏?」 そう俺が言うと、藤原が、だれ?と聞いてきた …………彼氏に会いたいんじゃ……ないのか? もしかして、彼氏を恋しく思ってないのか? 少し頭を出した期待の気持ちを確かめるべく、俺が思っている“彼氏”が合っているのかどうか確認のために質問した 玲「誰って……一週間前くらいにラブホから一緒に出てきた人 彼氏なんだろ??」 そういうと、彼は考え込むように下を向いた …………もしかして、別れた?? 俺にも……チャンスある……? やっぱり、連絡しなくていい、ここにいろ そう言おうと口を開いた瞬間、藤原が、あー!と思い出したような顔をした 朱「あの、お兄さんのこと?」 玲「そう、付き合ってるんだろ? 迎えに来てもらえ、電話するか?」 やっぱり…………付き合ってたのか………… ツキンツキンと痛む心に気が付かないフリをして、笑顔を作る ……やっぱり俺には無理なんだ………… 今まで付き合ってきた女もそうだった どれだけ優しくしても……どれだけ大切に思っていても…………最後は必ず俺ではないやつの元に行く……………… けれど…………今回だけは……藤原だけは………… どうしても手放したくなかった………… 彼、藤原の場合は……手を出すと、体目当てだと思われそうなので……徹底的に……そういう行為を避けた…… それは成功したように思えた………… 藤原は徐々に嫉妬をしてくれるようになり、よく俺を見て笑うようになった………… …………なのに…………お前も別のヤツのところに行くのか……………… ……俺はもう……お前に本気なのに………… 行き場のないこの心をどうすればいいのか………… 悩んでいた俺は全く気が付かなかった………… 藤原が泣きそうになって、俺を睨んでいたことに………………………… 暫くしても動こうとしない藤原を不思議に思い、俯いているその頭に、問いかける 玲「藤原?!どうした……彼氏と別れたのか?」 朱「なんでもないよ、離れて………… 彼に……連絡するから……………………」 玲「あ、あぁ………………」 ………………やっぱり、別れてなかったのか………… いや………………泣いているのか?藤原…… どうして泣いているんだ…… そんなに彼氏が恋しいのか…………? どうして俺じゃダメなんだ…… どうしてそいつのところに行くんだ…… どうして……俺を見てくれない………… 彼氏のところに行かせたのは、俺なのに…… 勝手に行かせて勝手に傷ついている…………馬鹿な俺 頼むよ……藤原…………俺を惚れさせないで…… これ以上好きになったら…………手放してやれない……………… お願い、俺を嫌って…………とことん、突き放して…………地獄に……突き落として………… リビングの扉を開いた俺は、その扉によっかかり、静かに涙を零した………………

ともだちにシェアしよう!