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第36話
玲「藤原……ふーじーわーらっ!!」
朱「ひゃいっ!!!」
玲「ははっ、家ついたぞ?可愛い返事だな~?」
ぼーっとしている藤原に話しかける
どうしたんだろう…………
さっきからずっとなにかについて悩んでいるように見える
…………もしかして……キス引きずってるのか……
そんなに嫌だったのかと……少しツキンと胸が痛む…………
その事を考えないように、玄関の扉を開き、藤原を下ろす
朱「っぁっ………………っく………………」
玲「どうした?!いたいか?やはり……」
朱「たいしたこと……ない…………大丈夫……」
大丈夫、そう言っているその顔は、全く大丈夫じゃなかった…………
今にも泣きそうな、辛そうな顔をしていて、耐えられなくなった…………
俺じゃ支えられない…………
…………そう痛感した…………
俺は…………このセリフを言うべきじゃなかった…………
だが、自分の中の黒い感情を隠すかのように、藤原にそのセリフを言ったのだった…………
玲「やはり、お前の彼氏を呼んだほうがいい……」
朱「っえ?…………か、彼氏?」
そう俺が言うと、藤原が、だれ?と聞いてきた
…………彼氏に会いたいんじゃ……ないのか?
もしかして、彼氏を恋しく思ってないのか?
少し頭を出した期待の気持ちを確かめるべく、俺が思っている“彼氏”が合っているのかどうか確認のために質問した
玲「誰って……一週間前くらいにラブホから一緒に出てきた人
彼氏なんだろ??」
そういうと、彼は考え込むように下を向いた
…………もしかして、別れた??
俺にも……チャンスある……?
やっぱり、連絡しなくていい、ここにいろ
そう言おうと口を開いた瞬間、藤原が、あー!と思い出したような顔をした
朱「あの、お兄さんのこと?」
玲「そう、付き合ってるんだろ?
迎えに来てもらえ、電話するか?」
やっぱり…………付き合ってたのか…………
ツキンツキンと痛む心に気が付かないフリをして、笑顔を作る
……やっぱり俺には無理なんだ…………
今まで付き合ってきた女もそうだった
どれだけ優しくしても……どれだけ大切に思っていても…………最後は必ず俺ではないやつの元に行く………………
けれど…………今回だけは……藤原だけは…………
どうしても手放したくなかった…………
彼、藤原の場合は……手を出すと、体目当てだと思われそうなので……徹底的に……そういう行為を避けた……
それは成功したように思えた…………
藤原は徐々に嫉妬をしてくれるようになり、よく俺を見て笑うようになった…………
…………なのに…………お前も別のヤツのところに行くのか………………
……俺はもう……お前に本気なのに…………
行き場のないこの心をどうすればいいのか…………
悩んでいた俺は全く気が付かなかった…………
藤原が泣きそうになって、俺を睨んでいたことに…………………………
暫くしても動こうとしない藤原を不思議に思い、俯いているその頭に、問いかける
玲「藤原?!どうした……彼氏と別れたのか?」
朱「なんでもないよ、離れて…………
彼に……連絡するから……………………」
玲「あ、あぁ………………」
………………やっぱり、別れてなかったのか…………
いや………………泣いているのか?藤原……
どうして泣いているんだ……
そんなに彼氏が恋しいのか…………?
どうして俺じゃダメなんだ……
どうしてそいつのところに行くんだ……
どうして……俺を見てくれない…………
彼氏のところに行かせたのは、俺なのに……
勝手に行かせて勝手に傷ついている…………馬鹿な俺
頼むよ……藤原…………俺を惚れさせないで……
これ以上好きになったら…………手放してやれない………………
お願い、俺を嫌って…………とことん、突き放して…………地獄に……突き落として…………
リビングの扉を開いた俺は、その扉によっかかり、静かに涙を零した………………
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