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第40話

いつもより、濃い玲の匂いがする このベッドで、いつも寝ているんだな…… その濃い匂いを発している原因を探す どれだ、どれだ………… …………あ、これだ………… その原因は枕だった その枕に迷いなく顔を埋める あぁ、これ変態みたいだ………… スンスンと匂いを嗅げば、ふわっと幸せな気持ちになれる この借りた服を着た時も、玲に包まれているような感覚に陥ったけど………… ………………これは全然違う………… 玲が俺の中にいるみたいに濃い………… ……すごく……落ち着く……………… 枕に頭を埋めながらスンスンと匂いを嗅いでいると……だんだん瞼が重くなってくる………… 落ち着く………… ……玲はどうして、俺をこの部屋に呼んだんだろう………… いつもは……客間なのに………… …………今日の俺を…… ……可哀想に思ったのだろうか………… 同情でも……なんでもいい……………… ただ、彼のそばにいれるのなら……………… 俺はそのまま彼の枕に顔を埋め、布団にくるまり、久しぶりに深い夢の世界へと落ちていった ・・・・・・・・・・・・Side玲 玲「………………藤原?」 俺の部屋の扉を開けると、そこには小さくまとまった藤原がいた すやすやと寝息を立てて寝ている姿に胸が締め付けられる 彼に近づき、上から寝顔を眺めると、彼の目元のクマを摩る すると、少し嫌そうに顔を顰めたあと、すやすやとまた幸せそうに寝始めた かわいい、かわいい朱雨………… ずっと……この時間が続けばいいのにと、そう思った………… どうして……俺はこいつともっとはなく出会えなかったのだろう………… なんでいつも俺は一足遅いのだろう………… 藤原とラブホの前で鉢合わせた時…… 今回の母親虐待の時……………… 彼氏と出会う前に出会いたかった 母親になにかされる前に助けたかった………… 玲「遅れて…………ごめんな…………」 ごめん…………ともう一度呟き、丸出しになっているそのおでこにキスを落とす………… いまだけ…………許して………… 玲「好きだ…………朱雨…………ごめんな……」 それだけ言うと、彼からすっと離れて 近くにあるソファをベッドの横に動かした 彼は多分、俺と一緒に寝たくないだろう だから、俺はソファに寝ようと思う…… だが、藤原の姿を見ていたい俺は、ベッドの近くにソファを動かし、そこに寝付く………… 藤原の寝顔を見つめながら、重たくなるまぶたに身を任せ、眠りへと落ちていった……

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