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第53話
………………………………遅い…………遅すぎる
朱「………………まだ出てこないの…?……」
明「……そうだよね………まだ来ないのかな……」
医師が手術室に戻って2時間はたっている……
そんなに時間がかかるものなのか……?
ソワソワしながら待っていると、赤いランプが消えた………………
ダァン!と大きな音を立てて開いた扉……
バタバタと複数の足音に混ざって
ガラガラ……と言う音がする
そこから出てきたのは…………
朱「う……そ…………
……っふ………ぅっ……やだ………
玲ぃ………………ぅぅっ…………
………いやぁぁあぁぁぁっ!」
明「ちょ……藤原さん!
離れて!」
医「心肺停止!
今すぐ緊急に入れて!」
看「は、はいっ!」
朱「やだぁぁあぁっ!
れいぃっ!れぇぇえいっ!!
いかないでぇえぇぇぇぇっ!」
駆け寄った俺は……明琉さんに剥がされてしまう…………
出てきた彼は……血だらけで、し、心肺停止……と言われてた……………………
れ、玲……死ぬの……?
ガタガタ体の震えが止まらない…………
もう二度と……会えない……?
……もう二度と……話せない……?
朱「や……やぁ………っぁぁぁぁああぁぁああ」
明「………………藤原さん…………」
運ばれていく彼を追いかける勇気はなかった……
もし、今追いかけて……死んでたら?…………
いやだ…………今……もう死んでしまっていたとしても………………まだ受け入れられない…………
明「…………藤原さん……」
朱「れい……死んでないよね…………」
明「あ、あたりまえだよ……」
………………そうだよね…………
でも……もし………もし…………………
嫌な考えばかりが浮かぶ…………
……さっきよりも近づいた“死”という文字…………
………………いなくならないで……れい…………
ポロポロと涙が止まらない…………
震えも止まらない………………
明「………………藤原…さん…………」
ぼやける視界の中……背中に温かいなにかが当たる………………
ちゅ………………とつむじに当たる柔らかいもの
朱「………………へ?」
だ、抱きしめられた……?
し、しかもキス!?
明「………………あ、うわっ!
えっと、ごめんっ!
き、兄弟が……泣いてる時…こうするから
つい癖で……ごめんなさいっ!」
あわあわとしている彼に、笑がこぼれる
なんだ、癖でしただけか…………
朱「っふふ…………大丈夫だよ?
そんなに慌てないで?
ありがとう…………
むしろ、なんか気持ち軽くなった」
明「そ、それならよかったけど…………」
朱「ごめんね、しゃがみこんじゃって……
玲のとこに行こっか……」
2人でパタパタと玲の元に向かう
後ろから……ニヤリと笑う影には、全く気が付く事ができなかった…………………………
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