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第60話

Side朱雨 俺に構ってくれていた玲…… あまりのしつこさに…………俺は自惚れていた ………………もしかしたら、彼も俺を好いてくれているのでは……と思った…………………… 両思いに……ついになれる………………と思った けど…………そんなの勘違いだった……………… まさか…………許嫁がいたなんて……明琉くんに言われるまで、気が付かなかった 確かに、言われてみれば思い当たる節はいくつかあった……………… しかし、どうしても認めたくない自分が出てきた…………………… 不信を拭いきれなかった俺は、明琉くんに話を詳しく聞いた。 彼によると、東堂家は代々Ωの女と番になるのが伝統で、しきたりであるらしい なので、明琉くんも、玲も許嫁がいるそう 玲はそれを受け入れ、高校卒業と同時に結婚をするらしい しかし、明琉くんはしきたりが大嫌いで、彼は今運命の相手を探し中だという Ωという性にこだわらず、どんな性別の人でもいいから、愛し合って結婚したいのだという …………………………いいな、その考え………… 俺はその考えを羨ましく思った 俺なら多分、その願いを簡単にかなえられる だが、東堂家となると、その願いを叶えるのは、容易ではないだろう 今更だが、東堂家はでかい 俺の家、藤原家はそうでもないが、東堂家は世界でもトップに入るほどの大企業だ 大企業では許嫁を作るのが当たり前で、明琉くんのような考えの人の方が少ないだろう 珍しい人種なのだな……と思った 悪くいえば、変わった人だな……とも思った それから明琉くんが、沢山の話をしてくれた 東堂家についてと、彼自身について………… だが、俺の耳には全く入ってこなかった 視界の端に映る青白い顔に目を向ける 彼、玲のことが、気になって気になって仕方なかった 好かれてないとわかったのに………………同情で付き合ってもらっていたと、知ったのに…………彼のことをまだ好きでいる自分がいる 諦めた方が……自分のためになるのはわかってる けれど…………どうしても……諦められない 玲………………ほんとに許嫁いるの? いたならどうしていってくれなかったの? 俺と付き合ったのは……同情だったの? 聞きたいことは山ほどあるのに…………いつまでも目を閉じたままの彼に、不安を覚えた………… 早く………………俺の不安をぬぐって…………

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