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第64話
Side冬馬
武道を習い始めて2年がたった
僕はあれから誰にも抱かれることがなくなった
レイプもされないくらい強くなったし、武道を始めてから凛々しくなった、とも言われた
その甲斐あってか、可愛い子に人気になった
抱かせて、と言われなくなった代わりに
抱いて、と言われるようになった
我ながら、快楽に弱いクズだなぁと思う
抱いて、と誘われるようになってから取っかえ引っ変え抱くようになった僕
可愛い子は僕に優しいし、なにより癒される
これで僕を抱こうとする者はいなくなった
…………………………………はずだった
彼が来るまでは
奏「あんたが…………冬馬さん?」
冬「そうだけど………………なに?」
奏「おれは…………奏多といいます…………」
冬「……………………はい?」
彼との出会いは、お気に入りのバーで、今夜のお相手を探しているときだった
αのイケメンが僕の肩を叩き、話しかけてきた
第一印象は、日本語下手だな……とか、変なやつだな……とかだった
外人っぽい見た目が少し混ざっていた彼
もしかしたらハーフかな……とか勝手に思っていた
じっと、見つめていると奏多さんが
あー、とか、うー、とか唸って顔を赤くしている
あー、抱かせろ……とかかなぁ、僕タチ専なんだけどな
とか思っていた………………しかし、彼の返答は思いもよらなかった
奏「……好きだ、付き合っては……もらえないだろうか………………」
冬「………………………………………………は?」
まさか、告白されるだなんて思ってもいなかった僕は、呆気に取られた
それに、彼の腰の低さにも驚いた
あの、傲慢でプライド高いαが…………Ωに頭を下げて、こちらの様子を伺うなんて…………
衝撃だった………
けれど、αの男、それに抱かれる側には、未だに抵抗があった僕は、その告白を断った
断ったら
わかった、またくる
と言って、彼は少し肩を落としながらバーを出ていった
あぁ、惜しいαを逃したかな…………と思った
あんなに態度が滑らかで、腰の低いαはいない
追いかけようとも思ったが、それ以上に過去のトラウマが強かった
ま、縁があればまた会えるだろう
そう思っていた
次の日、仕事帰りで車を走らせていると、信号に立っている彼を見つけた
キョロキョロとしている様子を見て、迷子かな……とおもって声をかけた
冬「あの…………奏多さん?」
奏「あ、昨日の………………」
話を聞くと、やはり迷子だった
案内する、と車に乗せ目的地まで送った
豪勢な住宅街に着くと、彼はその住宅街でも一際大きな家の前でおりた
やっぱり、お金持ちか〜と勝手に思っていた
すると、トントンと運転席の肩を叩かれ
後ろを振り向くと、申し訳なさそうな彼が1万円を渡してきた
冬「え?……なにこれ」
奏「お礼…………ここまで送ってくれたから」
冬「いいって、大丈夫」
奏「………………でも……」
冬「じゃあさ!今度食事行こ?
その時奢ってくれたらいいよ」
奏「は?………um…………OK…………
また連絡したい…………交換……いい?」
冬「あぁ、いいよ」
連絡先を交換しながら、なにをしてるんだ僕は……と思ってしまう
いつもなら、こんなことしないのに…………
絆された?…………ありえないだろ…………
今までαには、厳重体制を敷いていた僕の砦が脆く崩れていくのを感じた
ほかのαなら、絶対車で送ったり、次会う約束をしたりしないのに…………彼なら許せてしまうのは…………なぜだろう………………
自分の心を不思議に思いながらも、次の約束を取り付け、彼と別れた
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