65 / 87

第65話

Side冬馬 それから僕と奏多さんは連絡を取り、会うようになった 一回目は食事をしに……それ以降は日本語を教えるために…………何度も何度も会った 会う度に僕と奏多は仲良くなって、次第に惹かれるようになった …………………………そんなある日だった 「……………………うそ、奏多……?」 「あ…………と、冬馬 ちが、こいつは………………」 「誰?その子………………Ωじゃーん かわいい〜!」 「ちょ、お前だまれ……………… 冬馬!待って、冬馬っ!!」 ………………彼は可愛い女の人を連れて歩いてた…… 行先は…………ジュエリーショップ………… 彼は指輪を選んでたんだ……………… 僕は……そんな光景を見て、耐えきれなくなり、その場を走り去った………… それ以来、彼から連絡が来ても無視をし続けている……………… 彼は……僕より女の人を取ったんだ……………… ・・・・・・・・・・・・・・・ 「そんな…………ひどい…………」 「でも、僕らは付き合ってたわけじゃないし 僕に嫉妬する権利もない………… けど…………僕……好きになっちゃって………… っふ…………あれ?ごめん…………朱雨くん……」 「いいですよ…………泣いても ここには、俺しかいないし…………」 「ごめ、ごめんね…………朱雨くん……」 朱雨くんに吐いたからだろうか、涙が止まらない…………………… やっと………………好きになれた人………… その人は……別の人を選んだ………… やっぱり、あの時にOKしておくべきだったんだ 今更…………遅いけどさ……………… 朱雨くんの胸にすがりながら、子供のように泣いた 自分にはこんなになくほどの涙が残っているだなんて知らなかった もしかしたら…………彼は僕の初恋だったのかもしれない……………… こんなに胸が張り裂けそうなほど、涙が出るなんて…………今まで経験になかったから……………… しばらく泣き叫んだら、落ち着いてきた 「えへへ、はずかしいな こんなに泣いちゃうなんて…………」 「でも、わかります 僕も失恋中なので…………」 「え!?ほんとに!?」 「はい……………………」 それから、彼の話を聞いた 僕と朱雨くんが初めて行ったラブホの前で出会った彼に恋をしているらしい あの後、色々あって3週間という短い期間だけだけど、お付き合いをして……………… 今、その彼、玲くんは意識不明の重体だそうだ 彼にも婚約者がいたらしく、朱雨くんがその事を知ったのが今日……………… それで病院を飛び出してきたらしい 「なんかさぁ……………………」 「グズッ……なんれす?」 「僕ら1ヶ月で絆されすぎだよね〜」 「ふふっ、たしかに………………」 「他に良い奴いるよっ……ていうのは分かるんだけどさ やっぱり、それが分かってても、その人がいいんだよね…………」 「はい、その人以外考えられないですよね…………」 「はぁぁ……僕らって馬鹿だね……」 「ふふ、そうですね」 「ってか、聞いてよ!朱雨くん!」 「はい?」 「奏多ってばさ!………………」 僕らはお互いの傷を慰め合うかのように話をした ラブホに来たっていうのに、エッチをすることなく、お互い好きな人の愚痴を吐きまくった 泣いて、笑って、怒って……また泣いて…… そんなふうに、不思議な一晩を過ごした…………

ともだちにシェアしよう!