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第66話

Side朱雨 「昨日は…………ありがとね」 「いや、こちらこそ、ごめんなさい…………」 「はは、謝んないで また話そうね」 「はい!もちろん!」 一晩語り尽くし、泣きまくった俺ら 2人して目を腫れさせて、お互い頭を下げ合うその光景は、周りから見てさぞ滑稽だろう だが、俺らはとてもスッキリしていた 次は、幸せな恋の話をしよう、と話し合い 連絡先も交換して、たまに恋バナしようね といいながら別れた 幸せな恋なんて…………できるのかな………… そう思いながら……………………冬馬さんの後ろ姿を見送った いっそ…………冬馬さんと付き合えば俺も彼も楽なのにな…………なんて、クズなことを思いながら…… 彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、とぼとぼと帰路を辿る 冬馬さんと別れた途端に、玲のことを思い出す 大丈夫だろうか…………意識は取り戻しただろうか…………まだ寝ているのだろうか……………… と、ぐるぐると彼のことを考えてしまう 僕には………………そんな資格ないのに……………… はぁ………………と深くため息をついていると、前から大声で、自分の名前が呼ばれた 「………………藤原さん!!」 「…………………………え?」 遠くから俺に向けて走ってくる影に、目を見張る どうして……………彼が……………… しかし、近づいてきたその姿を見て、ガッカリしてしまった 「…………明瑠くん」 玲にそっくりな彼を見て、なんだ、きみか…… と声が出そうになる…… なんて失礼なんだろう……俺は……………… 彼は僕の近くまでやってくると、ゼイゼイと息を吐き、疲れたー!と言ってへたりこんでしまった 「だ、大丈夫??」 「はぁ…っはぁ…………藤原さん………… ……探した………………」 「………………へ?」 汗をかいて、俺を見つめる彼の目は、真剣そのもので 探した……と言われて頭の上に?が浮かぶ どうして探したんだろうか、なにか迷惑をかけただろうか……………… 心配になり、彼に声をかける 「…………な、なにかあった?ごめん 昨日は知り合いのところにとまってて……」 「はぁ……いや、なにも……ない…………」 「あ、そう………………」 なにもないなら、どうしてそんなに必死なんだ……と気になったが、笑顔に変わった彼の顔に、何も言えなくなった 「あ!言いたいことあったの、思い出した!」 「あ、うん…………で、なに?」 「あのさ、藤原さん しばらく俺の家泊まらない?」 「………………は?」 急な提案に……なんなんだよ、と言いたくなる だが、それが急な提案じゃないことを知らされる 「実はさ、玲に前々から頼まれてて 最近やっと準備が出来たんだ」 「そ、そうなんだ…………」 そのセリフに、ツキン……と胸が痛む 彼は……俺を追い出そうとしてたのか………… あぁ……今彼の存在を思い出したくなかったのにな………………

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