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第67話
Side朱雨
「………………っだから…………」
「いいよ…………」
「………………へ?」
明瑠くんの話の続きなんか聞きたくなかった
どうせ、婚約者と一緒に住むから、俺と住めなくなる…………とかだろ?
だから…………俺は………………
明瑠くんの話を遮るように、引越しを了承した
俺も、引っ越して、玲から離れれば…………いつか、この気持ちがどこかに行って……彼と彼の婚約者の結婚を祝えるように………………なると、いいな………………
俺が、引越しを了承すると、明瑠くんはとっても嬉しそうに頬を赤らめて、喜んでくれた
「ほんと!?嬉しいなぁ!
…………いつ引っ越す?
すぐのほうがいい?
部屋とか決めなきゃね!
それにそれに……家具とかも買わなきゃだし
あとは、あとは………………」
「ちょ、まって、話しすぎ…………」
「あ、ごめん………………
う、嬉しくて………………」
へへ、と嬉しそうに笑う彼に、こちらも笑みがこぼれる
その後も、明瑠くんの家への帰り道で
あれが必要かな、これも欲しいかもね
とペラペラと話してくれる
ずっと明瑠くんが話してくれたことで
俺は相槌を打つだけでよかったため
あれこれ1人で考える暇もなくて
心が軽くなった
あんなに考えていた玲のことが頭から離れて
明瑠くんの話が頭のほとんどを占める
そのおかげで、さっきまで落ち込んでいた心も明るくなって
明瑠くんとの新しい生活に期待さえ抱き始めた
だから、俺は全く気づかなかったんだ
彼があんな悪巧みをしていたなんて………………
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