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欲望
「なっ……!?」
日の暮れた公園のトイレから出てきた一颯と駿助の写真だ。駿助が強引に一颯にキスをしている。
学校帰りに公園のトイレでフェラチオをされたことがあった。その時の写真だろう。
「なんで……」
「たまたまだよ。お父さんに会う用事があったときに君たちを見かけて。まさかキスするなんて思わなかった」
一颯は目の前が真っ暗になった。
雨宮が何故わざわざ写真を撮ったのか?父と会うと言っているが、家とは真逆の方向にある公園なのに何故? という疑問に気付かなかった。
頭が真っ白になり、まともに考えられなかったのだ。
「弟から逃げたくて、僕のところに来たんじゃないのかい?」
「……ちがう…こんな……」
雨宮に知られてしまったショックで、小刻みに震える一颯の体を抱きしめながら雨宮が言った。
「僕と住めばいい」
「え……」
「一颯君ひとり養うくらい簡単だよ。弟から守ってあげる」
一颯は驚いて雨宮を見た。整った顔がうっすらと欲望に染まっている。
弟と同じ、男の欲望だ。
雨宮は性的対象として自分を見ている。一颯は怯えて雨宮の腕から抜け出ようともがいた。
「どうしたの? 弟となんて不純だよ。僕なら大人だし、君を守ってあげられる。
「……あの、離してください」
「君が小さい頃から見てきたけど。久しぶりに会ったら綺麗になって、ずっと気になっていた。男を知ったからだね……」
一颯は別人を見るように雨宮を見た。
まさか雨宮までそんなふうに自分を見るなんて思ってもみなかった。
「帰ります」
一颯の言葉に雨宮は不機嫌そうに顔を顰めた。
「弟の方がいいのか?」
「違う。そんなんじゃ……離して」
───怖い。
急に雨宮が知らない人間のように思えた。
子供の頃から兄のように慕っていたが、今の雨宮は別人のような空気を纏っている。
「離してくだ……あ!」
一颯はソファに押し倒された。
「弟とはセックスをしてるんでしょ?」
「何を!?」
「君も僕とご同類だろう。僕となら近親相姦よりもずっと健全な関係だよ。秘密を持って生きるのは苦しい。可愛い一颯君となら共有できる」
「違う……違います! そんなんじゃない! 離して!」
雨宮は苛立ちながら一颯に口付けた。
「ん! んぅう……む、ぁう」
一颯は雨宮のキスから逃がれようと必死に暴れた。
口内に入り込んだ雨宮の舌に思わず噛み付いた。
「!」
雨宮が唇を離して顔を上げた。唇に血が滲んでいる。
「……なぜ、君まで僕を拒むんだ……」
「なんのこと……あっ!」
雨宮はネクタイを解き、一颯の手を後ろ手に縛った。そして、制服のズボンを下着ごと乱暴に脱がす。
「ひっ!嘘……嫌!嫌だッ!どうして!?」
一颯は力の限り暴れたが、大人の男の力には敵わなかった。
「はぁっ……や、めて……嫌だぁ! いや……あう!」
雨宮は一颯の膝裏を掴み、大きく股を開かせた。
「ああ……やっぱり若くて肌がきれいだね。白くて滑らかで、しっとりしてる」
「いや……お願い、話を……あ!」
雨宮の手で大きく股を開かされる。どうにか脚を閉じようとするが、膝を掴まれて下肢を捧げるように大きく広げられた。
「やだぁあッ! 見ないでッ!」
「とても可愛いよ……気持ちよくしてあげるからね」
「あっ!」
雨宮が一颯のペニスをぬるぬると舐めまわす。
「嫌だ!いや……やめて……お願い……ああっ」
嫌なのに……気持ちが悪いのに、男に抱かれることに慣れた一颯の肉体は反応しはじめていた。
ぬちぬちとフェラチオされて硬くなってしまう。
「嫌、嫌、は、あ……あやめてぇ……ひ、あぅ……許してくださ……ッ!」
悲痛な喘ぎを漏らしながら、駿助の顔が脳裏をよぎる。
弟との関係は歪だ。間違っていると思う。けれど、一颯は弟に抱かれることに嫌悪感は感じていなかった。
力ずくで一颯を抱くのに、駿助は甘く切ない声音で一颯の名を呼ぶ。心細い幼子のように必死で一颯を抱きしめる。
だから一颯は駿助の腕を本気で振り払えない。
「いやっ……だ、め……あ! はぁあッ!」
射精しそうになったところで雨宮は口淫を止めた。一颯は震えながら荒い呼吸を繰り返す。
「ずっと可愛いと思っていたんだ。弟なんかよりも感じさせてあげるからね」
雨宮の指がアナルを撫でた。
「いやぁ! そこは嫌! やめて! 駿助! 助けてッ駿助ぇ!」
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