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第3話

「こ、コウジも…、アキちゃんも…そんなこと言わずにいっしょに帰ろうよ」 いつものことだけど…激しくなると、この二人のけんかは恐いので、慌てて止めるたくみ。 「嫌だ」 アキラは、ぽつりと言って… 「…ボクだって、嫌だよ、こんな奴ほっといて行こうたくみ!」 コウジは、たくみを呼んでアキラを置いて歩いていく… 「あ…」 たくみは、アキラの事を気にしながらも…コウジについていく… アキラは、先を行くコウジたちから少し距離を置いて歩きだす。 「…アキちゃん」 たくみは、少し歩いて振り返る。 「たくみ!もう平気だって、いつもの奴ら追い払ったから、気にしなくていいよ、気にしたっていいことないし!」 コウジは、どうしても気にする優しいたくみに言い聞かす。 「コウジは…アキちゃんと兄弟なのに、どうしてそんなに嫌うの?」 たくみは不思議に思って聞いてしまう。 たくみの質問に… 「…ボクだって、最初は仲良くしようと思ったけど、アキラが…ボクと仲良くしたくないみたいだし、アキラとずっと一緒にいた訳じゃないから…ボクたち全然兄弟っぽくないんだ…」 アキラの存在を知ったのは四歳の時、病弱で入院してたアキラをけんじ先生から教えてもらって… 「……母さんも仲良くしなくていいって言ってたから、もういいやって思って…」 少しうつむいてコウジはたくみに伝える。 「…そっか、でもアキちゃん、お母さんいないんでしょ…嫌ったらかわいそうだよ…」 アキラを庇うたくみをみて、かっとしたように言い返す。 「かわいそうなもんか!アキラは全然寂しいなんて思ってないよ、なのに…けんじ先生はアキラの事、ひいきして犬とかプレゼントしてるんだよ、ボクだってお父さんもお母さんもお医者さんだからあまり会えなくて寂しいのに…病弱だからって、平気なアキラばっかり…」 コウジはおさまらない怒りを立ち止まって振り返り、アキラに向かって言う。 「アキラなんか、突然やってきた知らない子なんだ、病院に戻ればいいんだッ」 「コウジ…」 たくみは二人の仲を気掛かりに思うが… 仲の悪さは解消されない…どちらも引かないから… 「オレだって、あんな家嫌いだ…でも」 小学校は家から通うようにって、けんじさんに言われたし… 病院も息苦しかったから… (オレは他に行くところがない…) こうやって…弟や他人に刃向かったりしても、なにもならないって充分わかってるけど… 自分を見下げる奴や…自分の存在を認めない奴に大人しく従っていたくない… そんな意地というか…プライドがあるアキラ。 「でもじゃないよ、そんな分からず屋だからアキラはお母さんに捨てられたんだよ!」 コウジはアキラが全然傷つかないと思い込んでいるので、行き過ぎた痛い言葉も平気で口にする。 「違う!」 その言葉は、はっきり否定するアキラ… 「違わないよ、じゃアキラのお母さんはどこにいるのさ!」 追い撃ちのように言うコウジ… アキラが相当嫌いなのだ。 「こうじ、そんなこと言ったらアキちゃんかわいそうだよ」 コウジをなだめるつもりでたくみは言うが… 「……うるさいッ可哀相じゃないッ!可哀相とか言うなッ!」 同じ子どもからの同情… 母の生き方… 自分の、生き方を否定するような哀れみはいらない! 「ほら、アキラに優しくしたってムダでしょ、そんな…わからず屋のアキラなんか、一生ひとりぼっちでいればいいよ!早く行こう、たくみ…」 直球に感情をぶつけるコウジ… 素早くたくみの手を引っ張って走って去っていく… 「……ムカつく」 言いたい放題言うコウジに…かなり腹が立つアキラだったが、ボソッと独りで怒るだけに留まるアキラ。 追い掛けてまで、言い返そうとは思わない… そんなことは出来ない… 悔しいけど、幼いころからコミニュケーション不足なアキラは、コウジのあれやこれやの喋りに、対抗できるだけの力がまだないのだ… いつかは思い切り言い返してやりたいと、言葉は覚えるが…やはり根本的に難しいから… いつも心はモヤモヤしている… しかし、そんな心を癒してくれる存在が…唯一、家の庭にいる。 アキラは家の門を入ると、いつも玄関とは逆の方向に歩く…

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