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第4話

毎日の楽しい日課… 「メアリー、リッツただいま…」 くったくない笑顔で話しかけるのは、檻のような小屋に入れられている2匹の犬… アキラはすぐ鍵で入口を開けている。 この2匹の犬は、叔父の健次が去年とその前の年に誕生日のプレゼントとして飼ってくれたもの… アキラの姿を見て、しっぽをいっぱいに振って喜ぶ2匹… アキラはその頭を撫でて広い庭の木陰に連れていく… 檻に入れているのは、コウジの母が犬嫌いな為。 なので、遊ぶ時もなるべく目立たないようにしているアキラ。 「よしよし、いいコにしてたか?おまえたち…」 まっすぐ自分を必要としてくれる犬たちの存在は、孤独なアキラの心を和ませてくれるのだ… ひとりの部屋に戻りたくなくて、時には夜遅くまで犬たちと過ごすことがあるが… 「もう暗くなってきたな…よし、ご飯もってくるから、待ってろよ」 優しく言い聞かせると…犬達の為に食事を用意して持ってくるアキラ。 「はい、しっかり食べろよ」 アキラが見守る中、2匹の犬たちは夢中で食べはじめる。 犬たちの世話をするのが生き甲斐のようになっているアキラ… 犬達に気を取られていると… 「ん?」 そこへ見知らぬ車が一台入ってくる。 セキュリティをかけてある門なのでナンバーを知っている人であることは確かだが… アキラは立ち上がって様子を見る。 車は庭の、あまり使われない車庫に入って行った。 その車庫は、アキラたちがいる場所に近かったのでアキラは様子を見る為、少し車庫を覗いてみる。 もうすっかり日が暮れて…辺りは薄暗い。 「誰だ…」 車から降りた人物は、静かな口調で問いただす。 「…!」 ふっと、車庫の明かりがつく… 「…子供?」 いぶかしく呟くその姿を見て驚くアキラ… 茶色い…髪をした、深い緑色の瞳をもつ存在… 自分と全く同じ色だ… 「父さん…?」 アキラは、思わず呟いていた… 「…何?お前は…あの、出来損ないの子供か…」 アキラをしばし見つめ…静かに紡がれた言葉。 「なっ…」 いきなり浴びせられた心ない言葉に…何も言えなくなるアキラ。 次第に怒りが込み上げる… 勉強ならクラスの誰にも負けない自分。 少しバランス感覚と足が弱いだけで、出来損ないなどと言われる筋合いはない! こんな人間が父親な筈ない… 「あんたこそ、誰だよっ」 つっかかるように言うアキラ… 「…子供と遊んでいる暇はない」 アキラの言葉を、冷たくあしらう人物… 年齢はおそらく30代後半なのだろうが…見た目は、髪の色…目の色も日本人ばなれした綺麗な顔立ちで、身長も低く若く見え、年齢不詳のような容姿だ… そして、つねに警戒しているような冷たい視線… 「……っ」 「…犬?健次か…勝手な事を…」 視線を下げ言う。 いつの間にか食事を終えて2匹の犬がアキラを守るように前に出ていた。 「け、けんじさんの事…」 その名前に反応するアキラ。 「健次は私の弟だ…どうやら健次は今でもお前の世話をしているようだな…」 そう呟いてアキラの前を素通りして歩いていく名もあかさない人物。 「…弟、じゃ…あんたが…父親?」 信じたくなかったが… 健次に以前、父は健次の兄だと、そう聞かされていたから。 今まで一度も会いに来なかった… 健次さんも…進んで父親の事を話そうとはしなかった。 そんな人物だけど… アキラは家の玄関に向かう父を追っていた。 「…血を引いているというだけだ、楠木の家にお前のような奴は必要ない…」 冷たい言葉…

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