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第9話
話すことを躊躇われたが…
いつかは受け入れなくてはならない事…
そう決意し話しだす。
「アキラは、自分の身体に違和感を感じたことはありませんか?」
緩く話しに入る健次…
出来るかぎり、アキラのショックを和らげたかった。
「…違和感?」
「例えば…走ったり、運動をした後など、足が痺れたり動けなくなったり…」
「……うん、それが?」
体育の時、足が痺れたりすることは時々あるけど…
それは、幼児期に足の筋肉の発達が他の子供より、未熟だったから自分だけの後遺症だと思っていた。
痺れても時間が経てば、すぐ良くなるし、あまり真剣に考えたことがなかったのだ…
「…アキラ、その痺れには原因があるんです」
「……」
「アキラの身体は…先天性の病気を抱えています」
静かに伝える健次…
「病気…オレが?」
呟くように答える。
なんだか他人ごとのようなアキラ…
すぐには受け入れられない。
「…筋神経伝達がうまくいかなくなるような…筋肉に負荷をかけられないような…一言では説明できないくらい、難しい病気です」
ゆっくり説明する健次…
病気の事をアキラに伝える。
急にそんな事を言われても…他と変わらず普通に暮らしている自分。
そんな難しい病気が自分にあるなんて信じがたい…
しかし、健次さんが嘘を言うはずはないから…困惑しながらも…
「…どうすれば、治る?」
ぽつりと聞いてみるアキラ。
一番答えづらい問いだ…
アキラの病気は、治療法がない…不治の病なのだから…
しかし答えなくてはならない。
「…今、現在、アキラの病気に対しての治療薬、治療方法はないのですが…発作時の緩和薬などは開発されています」
「治らないの…?」
ぽつりと聞くアキラ…
「…現段階では、そうです。しかし、医療は発展していきます。アキラの病気に対しての特効薬も、いずれは開発されると思います」
健次は、焦らず落ち着いて話す。
病気の告知を受けたアキラは…
やはり表面上、取り乱すこともなく…
それどころか、確信したような雰囲気で健次に呟く…
「…だから、親父は、オレのことを認めないんだ…」
「アキラ…」
答えられず名前を呼んでしまう健次…
「オレが治らない病気だから…」
そう静かに続けるアキラ。
「……」
確かにその通りで…
もし、アキラが先天性の病気を持っていなかったら…
ミツルはそこまでアキラを冷たく突き放したりはしなかった筈…
しかし…変えられない事実だから…
「親父、オレが生まれた時…オレを殺そうとしたって、そんな風なことを言ってた、何でか…その理由も…今、分かった…」
自分がそれほど必要ない人間で…コウジとの決定的な差…
「生きていることが辛くなるって…」
その時は…自分と、生かした健次を恨めと言っていたけれど…
「…安楽死、させてやるって…」
その場では…無茶苦茶な父の言葉。
他人事のように聞いていたけど…
理由が分かった今は…その意味が、重く心に浸透していくアキラ。
「そんなことまで、兄はアキラに伝えたんですね…」
何も知らない子供に、言っていいコトバではない…
酷いミツルの態度に、アキラの心を察すると…胸が痛む健次。
「……」
少しの沈黙…
「…健次さんが、オレを生かしたって…本当?」
破ったのはアキラ…
静かに聞いてくる。
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