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第15話
自分は、間違ったことは言ってないのに…
「…私はお前に何の興味も期待もしていない、お前は私の意志に反して生き続ける邪魔な存在、二度と目の前に現れるな」
淡々とした口調で言い放つ父ミツル。
生きている事さえ認めてもらえない…
目の前に居ることすら…
アキラの心に冷たいものが過ぎり…
その気持ちを閉ざさずにはいられない。
「…も、いい」
あんなに認めてもらう為に頑張った自分が…むなしくなって…
父の言葉を信じていた自分が…情けなく悔しくて…
やり場のない気持ちを必死で抑えながらうつむいて車から離れるアキラ。
「……」
アキラが避けたのを確認すると、言葉をかけるでもなく…直ぐ様、車を発進させるミツル…
その行動も、本当にアキラを邪魔にしか思っていないと見せ付けられているようで…さらにアキラの心を傷つけた。
「…っ」
しばらく独りたたずんでいたアキラだが…悔しさは消えやしない…
「っ、く…そっ、くそっ!」
抑えきれない感情が、アキラの冷静さをすべて奪う。
震える手を握りしめ…
怒りのまま走り出すアキラ…全力疾走してしまう。
駐車場からバス停へ向かって…
しかし、病院入口前を走り抜けたところで…足が縺れ、派手に転んでしまうアキラ…
「ぅ!痛ッ…」
ジンと痛みが伝わる。
それでも再び立ち上がろうとするが…
ズキッ!
と両足が激しく痛み出す。
「ァ…い、痛いッ…は、ッ」
その痛みは転んで出来た擦り傷の痛みとは比べものにならないくらい痛い…
両足がひきつって…立つことも出来ない…
以前、足が軽く痺れてしまうことはあっても…両足がこんなに麻痺してつったことは、はじめてだったから…
「っ…ふ、ッ…」
動けなくなって…その足の痛みも手伝って、抑えていた感情が溢れ出す。
綺麗な深緑の瞳から零れ落ちる大粒の涙…
止めようとしても止まらない…
「…あらあら、どうしたの?転んだの?病院で手当してもらう?」
道で転んだまま泣いているアキラに気付いて若い子連れの女性が話し掛けてくる。
「ぅ…っ」
アキラはうつむいて、否定するように、ただ首を振るだけ…
「ちょっと待っててね。お医者さん呼んでくるから!」
そう言うと病院に入って行き、受付の人に状況を伝える女性…
そこへ…
「どうしました?」
異変を察して声をかける人物…
ここの院長をしている楠木健次、アキラの叔父。
「あ、先生!外で子どもが転んだみたいで、少し怪我をしているんです」
医者の姿を見て簡単に伝える女性。
「どの辺りですか?」
すぐ場所を聞いて…病院入口前に確認にいく健次。
「…アキラ!?」
そこに倒れていたのは自分がよく知る人物…甥のアキラに間違いない。
驚きながらも健次は優しく声をかけ助け起こす。
「アキラ、もう大丈夫ですよ。どうしたんですか?」
「っ…ぅっ、」
急に抱き起こされ、びくッとするアキラだが…
その人物の顔を見て、ふっと力が抜け…
安堵感と、足の痛みや抑え切れない感情が溢れ出し言葉にすることができなくて…健次にすがりつき声を出して泣いてしまう。
「アキラ…」
健次はアキラの背を優しく摩りながら様子をみて、両足が麻痺していることに気付く…。
小学3年生の子供…
他の子なら治療や痛みで大泣きすることもあるけれど…
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